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ぜんぶ二人ではじめて

第43章 疑念

side 七海

廊下で先生からの質問に困惑してると、

「市川。部活終わった?」

と、輝くんが声をかけてくれた。

「うん!」

「竜たちも終わったみたいだよ。教室行く?」

「うん!」

「あ…センセー、さよなら〜」

輝くんが挨拶をする。

「あ、あのね?まだ、話してるんだよ。キミ。」

先生が声をかけた。

「いや、市川困ってるみたいに見えたんで。すんませんね。俺、『キミ』じゃないんで。市川以外の生徒の名前、ちゃんと覚えましょーよ。神保俊秀センセ。」

そう言って輝くんが私の背中を軽く押した。

ほら、行くぞって感じで。

「さようなら、先生。私、プライベートなことはお話ししたくないです。では、失礼します。」

そう言って、教室に向かった。

「輝くん、ありがとう!」

初めて輝くんが頼もしく見えた!

「いいえー。…?あれ?」

「なぁに?え…」

外が見える窓から、自転車であたかも待ち合わせていたような雰囲気の2人が…いて…それが…ヤスくん…と…美月ちゃん…だった…

その光景を廊下の反対方向から来た竜一くんも見ていた。

「…帰ろうぜ?市川…送るよ。」

優しく胸に響く、竜一くんの声に甘えたい。

「うん。ありがとう…」

そうかぁ…

ヤスくんはもう、私のことはどうでも良いんだ。

ヤスくんはもう、美月ちゃんと歩いてるんだ。

そうかぁ…。

言えないだけなのかな?

言わないつもりなのかな?

そんなの、嫌だ!

心が変わってしまったんだね…。

変わったのなら言ってよ…

私の知らない所で知らない会話をしないでよ。

私も話したいの。竜一くんが待っててくれてるんだよ。ヤスくんも美月ちゃんが好きになったならそう言ってよ。話すチャンス、ちょうだいよ。今日、帰る時、話そうと思ってたのに。

私とヤスくんの恋はこの辺りでお終いだね。

終わるにしろ、何にしろ、話さないといけないと思うんだけどな…

ちゃんと話してから次に進みたいって思ってるんだけどな。それは私だけなの?

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