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ぜんぶ二人ではじめて

第43章 疑念

公園の出入り口辺りで、誰かの話し声が聞こえた。

それまでにももしかしたら人が居たのかもしれないけど、私たちは初めて、人気に驚いて、身体を離した。

停めていた竜一くんの自転車を押しながら家へと近づく。

離れた身体が寂しくて、竜一くんの制服の裾をちょっとだけ掴んで歩く。

「ん?」

「手、繋げないから…ここ、持ってちゃ、ダメ?」

バクバク言ってる心臓。

「全然構わない…よ。良いんだけど、さっきも…いつも可愛いけど…めちゃくちゃ可愛くて…俺、待てるか自信がない…」

そう言って、見つめた。

「…竜一くんもカッコいいよ。…私も我慢できるか心配…。でも…」

続けるつもりで言ったのに、続かない。

「いや、我慢するし、待つけどね!市川が安心して幸せになる為には、待ってる時間がすげぇ大事だから…」

「うん。分かってる。我慢しようね?」

家の門に着いた。開けて中に入る。

「うん!…市川ん家、寄って良い?」

「うん。部屋は行かないよ?」

「うん。」

嬉しい!まだ、一緒にいられる!

玄関を開けて、リビングに案内する。

ソファーに座るよう案内して、お茶をいれる。

「紅茶で良い?」

「うん。市川のオススメで良いよ。」

「ホット?アイス?」

「アイスで。」

「はーい。私はミルクティーにするけど、甘いの平気?」

「あんまり甘いのはダメだな。ミルクもなしでお願いします。」

「はーい。」

そして、アッサムのミルクなしアイスティーを持ってく。

竜一くんの前に座れば良かったのに、隣に座った。

大きなソファーなのに…

「…紅茶、美味しい。」

竜一くんが照れながらそう言った。

「良かった。」

「……我慢大会みたいだね?」

苦笑いしながら竜一くんが言う。

「そうだね。…ゴメンね。隣、座るのイヤ?」

「まさか!嫌なわけないよ。…ただ…こーーーんなに近くにいるのに、なーーーんにも出来ないのがもどかしいだけだよ。」

そう言って、ギューーッて抱き締めた。

「あ!ごめんなさい!」

状況が申し訳なく思った。

「良いの!責めてないから、もうゴメンは言わなくて良いよ。市川の事がどれくらい好きか、神様に試されてるって思えば良いよ。」

その優しさにウルッときた。

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