テキストサイズ

ぜんぶ二人ではじめて

第43章 疑念

side 泰宏

帰宅して、美月が俺の部屋に来ることになってる。

勉強を見てほしいとか。

パタパタ…

この足音は美月だ。

「ヤス兄!きーたよッ!」

「おぅ。」

「じゃあ、私は生徒さんなので、ヤス兄、先生ね?」

そんな風に言われて、了承する。

先生か。

しばらく教科書を見て、ノートに書いていたが、

「先生、ここが分かりません!」

と美月が言った。

「どこだ?」

教科は英語だ。

「ここの訳が分かりません。」

中2の英語なら教えられる!

「ここか。この文の………」

「なるほど!納得です!」

そんなやり取りは満更でもなく…ひと通り終わった。

「美月、頑張ったな。休憩にするぞ。」

「はーい。…ヤス兄?」

「ん?」

お茶を飲みながら話す。

「今日さ?同じクラスになった、丸山洋太っていう男子に…告白された。」

ゴグッ!

飲んでたお茶を思い切り飲み込んでしまった。

「そうなのか。で?お前は何て答えたんだ?」

「えっとねー…好きな人がいるから、ごめんなさいって。」

頬を染めて伝える美月が可愛い。

「そうか。…そいつはどんなやつなんだ?」

美月は狙われやすいからな。

「科学部で、勉強はすごいできる人だよ。運動はまぁまぁかな。あとはよく知らない。けど、断ったのに、帰り一緒に帰ろうとか…方向違うのに言ってくるから、慌ててヤス兄に連絡してってメッセ送ったの。私ん家知らないと思うけど…日本語が通じないのかな。」

「なんだか厄介そうなヤツだな。そいつはどこに住んでるんだ?」

「えっと、確か…七海ちゃんのこと好きな人たちの中に野球部エースがいたでしよ?晃先輩?あの人の家の方向だったかな。」

「…そうか。…何かされそうになったら携帯かけろよ?」

「うん。飛んできて助けてくれる?」

「ばーか。当たり前だろ!」

「ヤス兄!」

そう言って美月が抱きつく。

事件のことは新井さんから美月抜きで話してもらった。知ったところで誰も美月に対して接し方を変えたりはしない。それは本当に美月を想ってのことだ。

俺が美月を守りたいってことも…伝えちまったんだよな。

そしたら、そこは出来るだけで良い!ヤスはヤスが思う人がいるだろ!適当なことするな!って…親父さんにどやされた…

それから何となく気が重くて…

思う人が美月だって…

ストーリーメニュー

TOPTOPへ