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ぜんぶ二人ではじめて

第43章 疑念

俺…今日…朝も帰りもナナちゃんに何も言わず…先に行って、先に帰ってきた…

これはマズイな。

明日、謝るか。

「ヤス兄、どうしたの?」

覗き込むようにして、美月が尋ねた。

「いやー…なんでもないよ。美月は可愛いなって思ってた。」

なんて、嘘をつく。

「もぉ!絶対ウソ!何か考えてる感じだもん!」

美月がむくれてそう言う。

「美月はさすがだなー。いろいろ考えなきゃならないこともあるんだよ。」

「男だしね!」

「それは関係ない。…そういや、お前、擦り傷どうなった?治ったか?」

胸と内股の擦り傷…

「胸は治った!こっちは…ヤス兄が見て?」

ちょっと照れて傷を指差す。

上目遣いは誘ってるのか?可愛くて押し倒したくなる。

「どれ?」

少し美月の上体を倒してソファーに座る。

スカートをめくり、脚を広げて確認する。

「まだ少し残ってるけど、キレイに治りそうだ。」

そう言って、スカートを戻す。

「良かった…。ねぇ、ヤス兄?七海ちゃんと…話できた?」

「いや…お前のことばっか考えてたから…できなかった。すまん。」

「ま、いいけど。」

明るく笑う美月が好きだ。

ナナちゃん、俺は…美月のそばにいたい。

ナナちゃんはモテるし、俺がいなくても誰かしらが想ってくれる。親衛隊もいるし、護ってくれる人がそばにいる。

でも、美月は俺じゃないとダメなんだ。

分かってくれとは言わない。

別れてほしい。

ナナちゃんのことを嫌いになったわけじゃない。

だけど、美月に必要とされてることで、すごく心が動くんだ。

明日にでも話そう。

隣で微笑む美月にそう誓った。

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