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ぜんぶ二人ではじめて

第4章 晃くんが分からない

「学校、行けそう?」

「うん!鞄持ってくる!」

「うん。待ってるよ。」

「ありがと。」

私が鞄を取りに行ってる間に、

「昨日は本当にありがとうね。あの子、さっきまであんまり元気なかったんだけど……。会いたい人に会えて、元気出たみたいね。今日もよろしくね。」

そんなことを話していたなんて知らず、

「お待たせ、泰宏くん。行こう?」

と。

「いってきまーす!」

元気よく登校した。

「昨日、母さんたち帰ってくるまで……いてくれたの?」

「ん。」

「ごめんね。心配かけて……。」

「ん。」

やけに無口……

「昨日のこと……あんまり覚えてないんだけど……」

そう切り出すと、

「そうなんだ。」

「うん。えっと……夢に……泰宏くんが出てきて……どこからが夢か……分からなくて……」

「どんな夢見たの?」

えっとねぇ……

「なんか……すごく……ドキドキした夢。」

キスしてた!なんて言えないよ。

「そっか。……ごめんね、熱あったのに…いっぱいドキドキさせて…」

「ううん。私も…たくさん恥ずかしいこと言ってごめんね。」

真っ赤になりながら話す。

「熱なきゃあんな大胆なことできないよな。」

「うん…そうだね…」

「市川さん、どこまで覚えてるの?俺が市川さんのこと、部屋まで運んだのは?」

「覚えてる。……手握ったのも……覚えてる……」

二人で真っ赤になる。

「抱きしめたことは?」

泰宏くんが少し小さな声で聞く。

「…覚え……てる…」

ますます顔に血がのぼる。

思い出して体が熱くなる。

「……そのあとは?」

そのあと……?

「んー?覚えてない……ごめんね。教えて?」

「えっ!今?」

「ダメ?」

「ちょっと待って。」

そう言って、深呼吸する、泰宏くん。

「市川さんが……俺の手……ずっと離さなくて……」

ドキンドキンドキンドキン……

見つめながら頬を染めてく泰宏くんを見つめる。

「寝言で、ずっと……俺のこと呼んでた。」

「えっ!?」

「すげぇ…………可愛くて……ずっと頭撫でてた。」

ドキドキドキドキ……

そう言うと、おでこに手を当てて、

「もう、熱、大丈夫みたいだね。ムリしないでね。」

そう言った。

「うん……。」

抱きつきたい……

覚えてないの、もったいない!

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