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ぜんぶ二人ではじめて

第45章 長い夜

ガタンガタン…

ガタンガタン…

音楽教室の帰り。いつもはじぃじが送ってくれるんだけど、今日はじぃじに急患が来て、家まで送ってもらえなくなったから、電車で帰ることにした。

電車は初めて!

「えっと…」

どうやって切符を買うのか分からなくて、ばぁばが教えてくれたことを思い出そうとしてると…

『1番線に…行きの電車が参ります』

「あっ!」

電車が来ちゃった!

「切符、買うの?」

同い年くらいの男の子が声をかけてくれた。
男の子とはあまり話したことがない…

「うん。」

一言だけ返す。

「どこ行き?」

優しくて人懐っこそうな瞳をしてる。けど、緊張する…。

「〇〇行き…」

「電車、来てるね。」

「うん。」

「俺も行き先同じだよ。はい、切符。」

手渡された小さな切符…

ふわっと触れた手から熱を持つ。

小さく胸が高鳴る。

トクトクトク…

「ありがとう。電車、間に合うかなぁ?」

「間に合うよ。停車時間長いから、大丈夫!俺、リュウ。君は?」

「ナナミ。」

「そっか。可愛い名前だね。」

「ありがとう。リュウくんも、カッコいい名前だね。」

「名前負けしないように頑張ってるとこだよ!」

そう言って、道着を見せた。

明るい笑顔の男の子。つられて笑顔になる。

クスクス笑いあって、初めての電車は思いがけず楽しいひと時となった。

不安だったことも、緊張してたことも、すっかり忘れて…

「ナナミちゃん、また会えるかな?」

「会いたいね。また。今度…」

バス停に向かうリュウくんの背中を手を振って見送った。

それっきり、会えなかった…けど…

幸せな出来事…

昔々の小さな出来事…

そんな夢を見た…

「……ゴクッ…」

あ、お水…

竜くんが、必死に状況説明をしてくれる。竜くんが、口移しで水を飲ませてくれた。

冷たい水が口の中に広がって、幸せー!生き返るー!ってことが3回くらいあって、意識がはっきりしてきた!

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