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ぜんぶ二人ではじめて

第47章 完全看護

side 七海

竜くんが料理を作ってくれてる。

私はのんきにお風呂に入って、鼻歌なんか歌ってる。

思いがけず、陸翔をお世話することになったのに、竜くんはテキパキ行動してくれて、本当にしっかりしてる。

竜くんと出会ったあの日のこと、どうして忘れてたんだろう?

さっきも、お風呂に小さい頃、よく4人で…て、どうして4人て思ったんだろう?

もっと思い出さなきゃいけないことがあるのかな?

竜くんと出会ったあの日…

電車の中で、最初は緊張してうまく話せなかったのに、竜くんが和ませようと、ハンカチでバナナやヒヨコを作ってくれた。

出来が良くて、感心してたら、教えてあげるよって言って、作り方を教えてくれた。

帰ってから誰かと一緒に作った。

母さんだっけ?

違う…

うーん?誰だったかなぁ?

思い出せないや。

竜くんが私と同じ気持ちでいたのなら、そして、竜くんは憶えていたのだから、なおさら片想いは辛かったと思う。

立場が逆だったら?

一度会っていて、好きだと思ってたのに、その相手が自分を忘れてたら?

しかも、他の人と付き合ったら?

ダメだ、私、泣いちゃう!

今日は陸翔がいるんだから、しっかりしなきゃ!

お風呂、出よう!

着替えて髪を乾かして、竜くんがいるキッチンへ。

いい匂い!

「竜くん、お風呂出たよ。お夕飯、ありがとう!」

嬉しい!

「あ、出た?もう、夕飯できるよ。」

「すっごーい!美味しそう!!!」

ダイニングテーブルに並べられたおかずを見て感動した!

「あ!陸翔、寝たんだね。」

「うん。ミルク飲んだらすぐ寝たよ。」

「ありがとう。熱も下がったみたいね。…お箸とか用意するね?」

「ありがとう。」

なんでだろう?竜くんが目を合わせてくれない!

陸翔のお世話で疲れちゃった?

「さ、食べようか!」

竜くんがにこやかに言う。

「うん!いただきまーす!」

「いただきます。」

パクっ!

卵焼きに明太子が入ってる。

「美味しい!」

私が感嘆の声をあげる。

「良かった。賞味期限が近いのから使おうと思ってね。」

「さすが!竜くん!本当に嬉しい!」

楽しい食事。美味しい食事、本当にありがとう!

今は楽しいから思い出さない。

目をあわせてくれないことも、今は触れない。

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