リモーネ
第2章 一輪草
中学校の3年間、剣道部に所属して、それなりに頑張っていた。
俺が中学3年だった去年。俺の部活は県大会出場がギリギリのところで叶わず、五月のうちに引退していた。
もう剣道をすることも、じっくり見ることもないだろうなと思っていた。
そんな俺を高校の県大会の観戦に誘った友人がいた。
その友人の名前は片岡喜一(カタオカキイチ)。
喜一は同じ中学の同じ剣道部員で小学校からの親友だ。
特に興味をそそられることもなかったが、会場も近く、大会の日に用事がなかった俺は、観に行くことにした。
会場は剣道独特の匂いと熱気で満たされていた。
観覧席の後ろの通路で観覧席と通路の境目の塀みたいなものに肘をついて、なんとなく観戦していると、突然肩を叩かれた。
「ねぇ!きみ!」
「!?…何ですか…?」
何事だ、と声のした方を向くと、そこには面、胴、垂れ…と剣道のフル装備をした長身の人物が立っていた。
俺はあまりの驚きで一瞬声が出ず、立ち尽くしていると、その人物は笑顔になって、
「俺、君に人目惚れしちゃった!」
と言いだした。
「…は?」
俺は突然の出来事に理解が追い付かず、間違いなく年上であるその人に対してため口になってしまった。
しかしその人物はそんなことは全く気にせずに、
「だから、俺の格好いいとこを魅せようと思って!」
と笑顔で言いきった。
「…はぁ」
俺がとりあえず返事をするとその人は満足そうな顔をした。
「俺の高校、今からそこの6コートで団体戦だから、それの中堅!赤!見てて!」
と、一方的に言うと俺の返答を待たずに小走りで去っていった。
俺が中学3年だった去年。俺の部活は県大会出場がギリギリのところで叶わず、五月のうちに引退していた。
もう剣道をすることも、じっくり見ることもないだろうなと思っていた。
そんな俺を高校の県大会の観戦に誘った友人がいた。
その友人の名前は片岡喜一(カタオカキイチ)。
喜一は同じ中学の同じ剣道部員で小学校からの親友だ。
特に興味をそそられることもなかったが、会場も近く、大会の日に用事がなかった俺は、観に行くことにした。
会場は剣道独特の匂いと熱気で満たされていた。
観覧席の後ろの通路で観覧席と通路の境目の塀みたいなものに肘をついて、なんとなく観戦していると、突然肩を叩かれた。
「ねぇ!きみ!」
「!?…何ですか…?」
何事だ、と声のした方を向くと、そこには面、胴、垂れ…と剣道のフル装備をした長身の人物が立っていた。
俺はあまりの驚きで一瞬声が出ず、立ち尽くしていると、その人物は笑顔になって、
「俺、君に人目惚れしちゃった!」
と言いだした。
「…は?」
俺は突然の出来事に理解が追い付かず、間違いなく年上であるその人に対してため口になってしまった。
しかしその人物はそんなことは全く気にせずに、
「だから、俺の格好いいとこを魅せようと思って!」
と笑顔で言いきった。
「…はぁ」
俺がとりあえず返事をするとその人は満足そうな顔をした。
「俺の高校、今からそこの6コートで団体戦だから、それの中堅!赤!見てて!」
と、一方的に言うと俺の返答を待たずに小走りで去っていった。