テキストサイズ

リモーネ

第2章 一輪草

「…知り合い?」

一連の流れを見ていた喜一が俺の背中の後ろから聞いてきた

「…いや、初対面」

俺はその問いかけへ謎の人に話しかけられる前の姿勢に戻りながら返答する。

「あ、そっか、一目惚れっていってたもんな…。」

一目惚れって男同士でもあるんだな。なんて呟いて器のでかさを発揮する喜一に、いや、気にするところそこじゃないからと言いつつ6コートを見る。

そこではちょうど、団体戦の最初。対戦相手同士と3人の審判との礼をしているところだった。

団体戦はふつう5対5だが、片方が四人だ。
先鋒の次、次鋒が不戦勝だな。

なんて考えていてふと、気がついた。

人数が少ない方…赤の襷を背中につけている。
さっきの謎の人の高校じゃないか。

しかもこれは準々決勝だよな。
ってことは8位決定戦だし、相手もそこそこ強いだろうなぁ。

そんなときに4人ってすっごい不利…。

…とりあえず見ておこう。

そんなことを考えながら勢いづけの勝利が欠かせない先鋒同士の戦いを見た。

すると赤はあっという間に2本勝ちをしてしまった。
わー。すごいなぁ…なんて思いながら、赤が一人足りないがために余ってしまった白の次鋒が蹲踞するのを見る。

次、中堅の赤はさっきの変人…いや、えー…っと、空と風で…そら…かぜ…さん?面白い名前だな。
とにかく、どんな試合をするのだろうか。

あれだけ堂々と宣言しておいて負けるなんてことはないよな。

「始め!」という主審の声を合図に試合が開始される。

それと同時にそらかぜさんは目にも止まらぬ速さで相手から面を奪う。

そんな剣道を見せられてしまったら情熱の覚めた俺であっても、剣道をしたことがある人であれば誰でも興奮する。

そらかぜさんはそんな風にあっという間に2本目もとって、勝ってしまった。

そのまま残りの副将も大将も2本勝ちで、もう、凄いとしか言えなかった。

次の準決勝も勝つのかな。なんて思っていたら、そらかぜさんは勝ったものの、団体戦としては僅差で負けてしまい、やはり4人しかいないのが響いたな。残念だ。と思っていた。

その試合を見て、やっぱり負けるのは辛いやと思いつつ、そらかぜさんみたいな剣道ができたら…なんて考えてしまい、
なんだかもやもやとするので決勝戦が始まったくらいで喜一をおいて帰ろうと玄関まで行くと、その近くにそらかぜさんがいた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ