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リモーネ

第2章 一輪草

俺は彼に何を言えば良いのか分からずに戸惑っていると、そらかぜさんが俺を見つけた。

俺が「試合お疲れさまです。とてもかっこよかったです。」と伝えるために彼に一歩近寄ると、彼は突然走り出した。

俺は驚いて反射的に追いかけてしまった。

試合であんなに素早い動きをしていたので、中の上程度の運動神経である俺には到底追い付けないだろう、と追いかけ始めた瞬間に考えたが、要らぬ心配だった。

そらかぜさんはどうもちゃんと靴を履いていなかったようで、2歩ほど踏み出したところで大きくバランスを崩し、靴を吹っ飛ばしながら盛大に転ける…かと思ったがきれいに受け身をとって立ち上がった。

そらかぜさんがそんなことをしている間に俺が追い付き、そらかぜさん。と後ろから声をかけた。

「お、俺…君に格好いいとこ、見せれたかな…?」

と振り向かずに俺に問いかけた。

「とてもかっこよかったです。」

俺が素直にそういうと、そらかぜさんはすごい勢いで振り返り、

「本当!?
おれ、君にカッコ悪いって言われたらどうしようかと思っててさ。」

とビックリするくらいのいい笑顔で俺に笑いかけた。

「俺さ、君の名前も聞いてなかったからさ、でも君にかっこいいと思ってもらえたかが凄く気になっちゃって。だからせめてもう一度君に会いたいなと思って。」

なんか、俺、もしかしてだけど、告白されてるのかな。
いや、さすがにそんなことはないだろう。

「…で、さ、君はなんて名前なの」

そらかぜさんは照れくさそうに遠慮がちに聞く。

「え、あっ、えと、自分は、竜胆星那といいます。」

あらぬことを考えていたために変な答え方になってしまった。

「…じゃあ、セナちゃんだね。
俺の名前は空風かえで(カラカゼカエデ)。
そらかぜじゃないよ(笑)
まぁ、よろしくね。セナちゃん。」

そういって微笑む。

「あっ、すみません読み間違えてしまって…。あ、えっと…。」

「かえでで良いよ」

俺が何と呼ぼうか迷っていると下の名前で呼ぶように促された。

「あ、じゃあ、かえで先輩。よろしくお願いします。」

「先輩だなんて嬉しいなぁ~。俺まだ高一だよ~?
…ん?あれ、セナちゃんってもしかして高校生じゃないの?」

「中3です」

「!!」

俺が学年を伝えるとかえで先輩は驚きましたということを絵にしたような顔で驚きを表す。

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