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LOSE and ABTAIN

第2章 Lost memory

・・・

「単刀直入に言うわ。あなたの体にはもう動かない所が有ります。

きっと気づいているだろうし、言わなくてもわかるんだろうけど。

左腕は麻痺していて、君の眼はもう見えない。声帯も、切除しました」

エリカは声のトーンを落とし、目を伏せる。

「つまり、声も出ないってこと」




紅葉にとってこれがどれだけ辛い事なのかは星太にしかわからない。

3歳から続けていた、歌。歌手になるために努力し、先日ある事務所からスカウトを受け、契約寸前だったのだ。




エリカには事前に星太がそのことを言ってあったので、この能天気なエリカでもそれを伝えるのはつらい事だったのだろう、エリカの表情も曇る。

紅葉の目にはもう何も映っていないのだが・・・その目には涙が。

本当に漫画かのようにツーッと一筋、涙が流れた。

だが、声が出ないから何かを発することもなく、鼻を啜る音だけが部屋に響いた。

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