
LOSE and ABTAIN
第2章 Lost memory
「左手はリハビリしたら使えるようになると思うわ。そういうのも私が担当するからね、自分一人で抱えてないで、私を頼ってね。一緒に頑張ろう」
エリカはさっきまでの気持ちを吹き飛ばすようにそう告げると、紅葉のファイルを閉じた。
「君の傷はほぼ完治しているから、あと3日ほどで退院で。でも、退院後も病院通いになります」
今の紅葉は快く返事ができるほど、余裕のある心持ではない。
「退院後も私が心のケア等、毎日決まった時間にちょっとでも会う決まりだからね」
『そんなことどうでもいい』
と思ったが、声にできずにただただそれを聞くだけだった。
