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甘い記憶

第5章 盲愛

「…ねえ麗くん、1回くらいなら、行ってきてもいいよ?」
「………え?」

麗は立ち止まった。手を繋いでいた詩織も、自然と立ち止まる。

「中井さんとごはん。先輩だしあんまり断るといけないもんね。」

本当は、行ってほしくない。しかし、詩織よりも華やかで美人で大人な中井の方が、自分よりも麗に相応しいのではないだろうか。詩織は少し前からそんなことを考えるようになってしまった。

「だからーーー」
「詩織。」

麗が詩織の話を遮った次の瞬間、強引に唇を奪われた。

「んんっ?!…っ、あ…ふあっ…」

今までされたことがないくらいの激しいキスに、詩織はただ身を任せるしかなかった。そして、やっと唇を離した麗は、ひとことだけはっきり告げた。

「僕の家、行こう。」



麗の家にあがるのは初めてではなかった。お互い一人暮らしなので、よくお家デートをしていた。
家に入り、詩織はベッドの上に座らされた。麗は、詩織の前に向かいあって立っている。

「麗くん…?」

先ほどから何も喋らない麗を心配するような、怯えるような声で詩織が呼んだ。

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