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神様の願い事

第1章 不思議な噂

《sideN》



俺は大野さんの秘密を知っている。

なのにあの人は危機感が無いというか、常にぼーっとしてる人だから。

だから俺が張り付いて注意してやってるんだ。

さっきだって危なかった。
もう少しで耳まで出る所だったぞ?


和「ねえ、それまだ治んないの?」

智「うん」


あの三人は先に撮影に入った。
だから今は二人きり。


和「テレビとかで出さない様にしてよ?」

智「ん~」


なんでこうなったのか分からないって言うんだ。
本人が分からないんじゃ、俺だって見当もつかない。


和「今んとこ尻尾と耳だけ?」

智「たぶん」

和「気合い入れたら引っ込むんでしょ?」

智「うん」

和「じゃあぼーっとしないでよ」

智「それは無理だよ(笑)」


笑ってる場合じゃ無いでしょうよ。
俺だったらビビリ倒して家で泣いてる。
なんなのこの無駄な度胸強さは。


和「出してって言ったら出せるの?」

智「どうだろ?」

和「ちょっとやってみてよ。耳、出して」


眉間に皺を寄せて斜め上を見上げる。
そして下を向いて目をぎゅっと閉じると集中した。


智「ん~…むんっっっ」


ぴょこ


和「おお!」


出た。


智「ぜえ、ぜえ」

和「え、なに。そんな疲れるの?」

智「血管切れるかと思った」


ぜえぜえ言ってるけどその頭に生えた耳はぴょこっと立っており、すこぶる可愛い。


和「へえ、初めて見た時も思ったけど、結構似合うじゃん」

智「べ、別に似合ってなんかいらない」

和「だけど可愛いよ?」

智「ひゃ、ちょっやめ」


思わず耳を撫でた。
なんか敏感らしい。


和「ふーん。ここ弱点なんだ」

智「…やめろよ?」

和「そりゃっ」

智「こら、やめっ、ひゃひゃっ、ひ、引っ込め! 引っ込めってば!」


秘密を知っていると言うよりも。


智「おま、後で覚えとけよっ」

和「え? 俺にそんな口聞けるの?」

智「ごっ、ごめ、もう言わないからっ、うひゃひゃっ」



弱みを握っちゃったな。






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