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神様の願い事

第4章 誤解



智「ぁ...」


なんだこれ。ゾワゾワする。


智「っ、ちょ、ちょっと」


気持ちよくなんて、全くならないじゃないか。


「...どうしたの」

智「や、も、もう大丈夫」


耳に触れる唇も、首筋に触れる指も、何一つ微睡む要素は無かった。


「大丈夫って何が」

智「ちょ、編集長...っ」


なんなら嫌悪しか沸き上がって来ない。


智「す、ストップ」

「...駄目だよ。だって恋人居ないんでしょ?」

智「そ、れは、そうですけど」

「触ってって言ったの大ちゃんでしょ?」


なんだよ、俺ノーマルじゃねえか。
心配して損した。


智「違...、か、確認をしたかっただけで」

「確認?」

智「ソッチなのかなぁって、一瞬思ったから」


大丈夫だ。俺は至って普通だ。


「...で? どうだった?」

智「や、違うみたいです」

「ええ? 惜しいな」

智「惜しいって(笑)」

「だって折角大ちゃんが誘ってくれたのに、残念だなあ...」


誘った訳ではないけれど、確かにうかつだったな。
俺を諦めたとは言え“あれは誤解だ”なんてわざわざ言いに来たんだ。
またその気になってしまうかもしれない。


「でもさ、気付いてないだけじゃないの?」

智「え?」

「だってアレ、自分から仕掛けてたでしょ。いくら俺を騙す為とは言え、あんな顔で迫れるか?」

智「や、迫った訳じゃ(笑)」

「迫ったよ。凄い怪しい顔して迫ってたよ。...櫻井くんだって最初は驚いたようだけど、すぐに本気のキスしてたよね?」


あの芝居が本気だと言うのか?


智「本気...?」

「どう見たって本気だろ。あれは恋人同士のするキスだよ」


確かに恋人同士に見えなきゃ意味が無いと、“本気のキスをしよう”なんて翔くんに迫った。

逃げ腰だった翔くんは、その言葉を聞くと途端に様子を変えて。


「それとも大ちゃんは、誰とでもあんなキス出来るの...?」


誰とでもなんて出来ない。

それどころか、あんなキスは初めてだ。


ぼーっとして微睡んで、心がふんわり暖かくなるような。


あんなに疼いたキスは、初めてだった。







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