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神様の願い事

第4章 誤解

《sideN》



翔「智くんっ」


あ。やっちゃったな。


翔「あ、あれっ?」

潤「もういっこ」

翔「くそっ」


勢い良く戸を開けたはいいものの、ここは二重扉になってる。
完全にフライングだ。


ドタドタガララっ


翔「さっ智く、もがっ」

潤「あっすいません、部屋を間違え...って、え」

翔「もががっ」

和「あれっ、大野さん?」

智「え...」


責任を負うと言う翔さんはカッコイイけど、やっぱ冷静にならないと。
潤くんもそう思ったのか飛び込む翔さんの口を咄嗟に押さえた。


「また君達か」

潤「すいません(笑)」

智「え、てかなんで」

和「たまたまだよ...ってかそれは、一体何をしてるの?」


やっぱり押し倒されてた。
編集長は大野さんの両肩を押さえ付け、馬乗りになっている。
だけど大野さんは結構な力持ちだから、両手をぐいーんと伸ばして編集長が距離を詰められないようにしてた。


「いやこれは」


俺が小首を傾げて2人を見ると、編集長は大野さんから飛び降りて正座をした。
すると大野さんもゆっくりと起き上がって。


智「...受け身の練習、みたいな?」

「そ、そうだよ。大ちゃんなんでも出来るからさ。教えて貰ってたんだよ」

和「あ、そうだったんですか」


見え透いた嘘を。


翔「はぁ? そんなんじゃ...っ、もご」


違うだろと言いたい翔さんの気持ちは分かる。
だけど大野さんはどうして編集長を庇うのか。


智「じゃ編集長、僕はそろそろ」

「あ、ああ。またゆっくり話をしような」

智「時間作ってもらってありがとうございました」


大野さんが編集長を呼び出したのか。

俺達は恋人なんじゃないと、誤解を解く為に。


「あ、大ちゃん」


帰ろうとする大野さんの肩を掴み、編集長は何やら耳打ちをした。


智「え...」

「当たってると思うよ?」

智「いやいや...、それは無いですよ(笑)」

「でもあの剣幕」

智「俺達はこれが普通なんですって」


苦笑いをする大野さんは、編集長を窘めるようにして部屋を出て行った。

すれ違いざまに俺達に“助かったよ”なんて小さく囁いて。


だけど翔さんとは目を合わせなかったんだ。


いや、合ったのかな。


だけどすぐに逸らして、静かに部屋を出たんだ。







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