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神様の願い事

第4章 誤解

《sideO》



また変なとこ見られちゃったな。

しかし一体どうしてアイツらはあんなにタイミングがいいのか。
編集長に会うなんて一言も言ってないのに。


翔「智くんっ」


その声にドキッとした。
さっき編集長に言われたからじゃない。
店を出て安堵しきっていた背後に声を掛けられたからだ。

振り向くとやはりそこには翔くんが居て。


智「あれ...、翔くんメシは?」


部屋を間違えたと言っていたからメシだってこれからだろうと疑問を口にした。
だけど俺の背後に佇む翔くんの顔は少し強ばっていて。


智「...あの2人は? 一緒じゃないの?」


この顔、いつかも見た事があった。
確か前も編集長と会った時だったっけ。
仁王立ちして怖い顔をして、俺に説教をしたんだった。


翔「なんで会ってたの?」

智「え?」

翔「狙われてるって知ってるでしょ? なのにどうしてあんな不用意に会ったりすんだよ」


俺の質問なんて聞いちゃいない。


翔「...あんな誤解、何の問題も無いよ」

智「でも、やっぱ迷惑かけんのやだし」

翔「迷惑? 誰にかかるの」

智「だから翔くんに...」

翔「はぁ?」


だから怖いんだって。
やっぱ編集長の言ってた事は間違いだ。

“だけど櫻井くんは、そうだと思うよ?”

そうだと思う。その“そう”ってのは、好きだとかそういう事を指してるんだろうけど。


翔「問題無いって言ってんじゃん。どうしてわからないんだよ」

智「だけど絶対、かかるんだって」

翔「かかんないよ。かかんねえよそんなの」


好意があるとは思えない程の怒りっぷりだ。


翔「俺は大丈夫なんだからさ。だから、無茶しないでくれよ…」


あんなに怖い顔をしてたのに、途端に眉を下げて。


翔「頼むよ、心配なんだよ...」


その情けない顔は、今にも泣きそうに見える。


智「翔くん...」


俺を心配したが為にこんなに情けない顔をする。

さっきは怒りでぷるぷると震えそうだったのに。


智「ごめん、心配かけて」


その情けない顔が可哀想で、俺は胸が痛くなるんだ。


俺がこんな顔をさせたと、痛くて苦しくて堪らなくなるんだ。






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