
神様の願い事
第4章 誤解
桜色に染まる頬に、濡れた唇を薄く開けて。
翔「大丈夫...?」
智「ん...」
小さく息を吐いて、俺の伸ばした腕を掴んだ。
智「っ、あ」
せーのと息を合わせて力を入れたけど、智くんはすぐに崩れて。
智「ふふ、ごめん...」
俯いて少し笑った。
翔「もっかいいくよ…?」
謝るのは俺の方だ。
俺がおかしな事をしたから、智くんは驚いて腰を抜かしたんだ。
翔「せーの...、よ...っと」
さっきより力を入れて、智くんを引き上げた。
すると、その勢いで智くんはポスっと俺の胸に飛び込んできて。
智「ぁ、よかった。立てた...」
腕にしがみついて、その身体を俺の胸に預けてる。
未だしっかりと力が入らないのか、預けた身体はそのままに顔だけを上げて俺を見て。
智「キスは、してない」
水分を含んだ目を揺らめかせて言うんだ。
翔「え?」
智「ごめん。ちゃんと話すから」
翔「うん...」
俺だって謝りたいのに。謝らなきゃいけないのに。
どうしても、そのタイミングを智くんが奪って。
謝るのは智くんばかりだった。
智「ふぅ...」
翔「落ち着いた...?」
リビングに戻り、智くんをソファーに座らせる。
気分が安らぐという貰い物のハーブティーを出すと、それを一口啜って小さい息を吐いた。
智「うん...。ふふ、ごめんね。驚いた?」
まただ。また先に謝るんだ。
翔「驚かせたのはこっちだよ...。ごめん...」
智「いや...、うん、驚いたけど」
チラッと俺を見て、目が合ったけどすぐに視線を外して。
智「俺が言わなかったからでしょ?」
カップを両手で持って俯いたまま、智くんは話す。
智「俺の考えが甘いから怒ったんだよね? 前も怒られたのにさ。ごめんね...?」
翔「怒った訳じゃ...」
俺が怒って行動した事だと智くんは思ってる。
確かに怒りもあったし、せつなくもあった。
翔「...とにかく、おかしな事してごめん」
だけど腹が立ったからあんな事をした訳じゃない。
欲情したんだ。
顎から水を滴らせる智くんを見て、感情を抑えられなかっただけだ。
