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神様の願い事

第4章 誤解

《sideS》


ああ忙しい。
智くんの言葉のひとつひとつに反応してしまいそうだ。

だけど動揺を悟られちゃいけない、悟られてしまったら、俺はおかしなヤツだと思われてしまう。

だから“男を恋愛対象に”との言葉で浮かれてしまった事も、“やっぱ違う”と切り捨てられガッカリした事も、全ては胸の内にしまうんだ。

平常心、平常心だぞ俺。


智「俺ってそんなオネエっぽく見えるのかなぁ」


こっちが落ち着こうと必死なのに、そんな事も知らずに隣の智くんは唇を尖らせてるし。


翔「つか誰にそんな事」


なにその唇、クソ可愛いとか思ってる場合じゃなくて。
誰が言ったんだそんな事。


智「編集長」


またかよ。
や、待てよ? そんな事を言うという事は、そんな要素を編集長が見たからだ。


翔「やっぱなんかされたんじゃ...」

智「だからぁ、違うってば」


まぁ多少しつこいかなとは思ったけど、心配だったんだ。
だから呆れられる事を覚悟で聞いたのに。


智「本当、疑い深いな(笑)」


呆れた上に笑われてしまった。


智「前にさ、ほら、見たじゃん」

翔「え?」

智「俺と翔くんの、キス...」

翔「あ...」


俯き加減の視線をよこし、俺をチラッと見て話していたのに、“キス”のところで視線を外した。


智「それ見て、思ったんだって」


視線を落として俯く横顔は、どことなく恥ずかしそうで。


翔「そう見えた、って事...?」

智「みたい...」


智くんはオネエでは無い。


翔「ちゃんと、恋人に見えたんだ...」

智「ん」


オネエでは無いんだ。
なのにそう見えたと言う事は。


翔「...本気だったから?」

智「え?」


あのキスが、芝居じゃなくて本物に見えたからだ。


翔「本気のキス、したから...?」


芝居じゃなくて、本物だったんだ。


俺が感じた甘い吐息も柔らかい唇も。



うっとりと醸し出す甘ったるい空気も、全て本物だったという事だ。






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