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神様の願い事

第4章 誤解



智「...やっぱ翔くんて芝居上手いよね」

翔「へ?」

智「だってさ、編集長は本気にしちゃったって事でしょ(笑)?」


はぐらかされているのか。
“さすがだよね”なんて智くんは呑気そうに笑っているし。


翔「...本気のキス、じゃないの?」

智「え? だから、そういう芝居してくれたんでしょ?」


ニコニコと笑ってはいるものの、俺とは目を合わさずに俯いてる。


智「...なんか、スイッチ入るのかな」

翔「え?」

智「翔くん。急に雰囲気変わってさ、圧倒されちゃったよ俺...」


スイッチ?
入るのはソッチだろう。
普段のふわふわしたあどけない雰囲気を急に隠し、低くて甘い声で俺を誘った。

ゾクゾクと背が震える程の甘い声を、俺に聞かせたんだ。


翔「俺じゃないよ…」

智「ん?」

翔「スイッチ。入ったのは俺じゃない」


もし俺にそんなスイッチがあるとしたら、押したのは智くんだ。


翔「そっちでしょ。スイッチ入れたの...」

智「え...」


平常心、平常心だぞ。


智「翔、くん...?」


その丸い瞳に惑わされるな。
俺は明日からもこの人と一緒に仕事をしなくちゃならないんだ。


智「どうした...、なんか、雰囲気が」


揺らめく垂れ目に惑わされちゃいけないんだ。


智「どこ見てる...」


その濡れた唇に惹き付けられるんじゃない。


智「ち、近いよ」


このまま引き込まれてしまったら、明日からどうやってこの人と付き合っていけばいいんだ。


智「ちょ、しょ...」


壊しちゃいけない。


智「...っ」


この人を俺のものにしたい。

そんな事、いつだって思ってる。


だけど駄目なんだ。


だってこの人は、俺をそんな目で見ていないんだから。


翔「智くん...」


俺に対して恋愛感情を持てない人にこんな事。



そんな事をしたら俺は



嫌われるに決まってるんだから。







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