テキストサイズ

神様の願い事

第4章 誤解



ああほら、また。

駄目だって、嫌われるって分かってるのに。

どうして俺はセーブ出来ない。


翔「これも、芝居だと思う?」


そんな事聞いてどうなるんだ。


智「え...」


ほら、困っちゃっただろ。


翔「...編集長に触れられても、気持ち良くならなかったんでしょ?」


ふわりと押し付けた唇をほんの少し離して、至近距離で智くんの顔を見てるんだ。


翔「今は...? 俺に触れられても、気持ち悪い...?」


近すぎて、智くんの瞳しか見えないけど。


翔「嫌そうな顔、してるようには見えないけど...」


瞬きもせずに俺を凝視するその瞳は、驚いてこそいるけれど、嫌がっているようには見えないんだ。


翔「ここでしょ? 触れられたの」

智「ちょ...」

翔「同じところ、触ってあげるよ」


こんな事をして、俺はどう思われるだろう。


翔「もう一回確かめた方がいいよ。俺が、触ってあげるから...」

智「翔、くん...?」


だって見えないんだよ。嫌がってるなんて。
男の俺にも希望があるんじゃないかって、そう思えるんだ。


翔「まず耳、ね」

智「ぁ...」


ほら、少し眉はピクッとしたけど、目が細くなってるじゃないか。


翔「で、首?」

智「っ、しょ...」


俺の肩をぎゅっと掴んで、目を閉じる。
薄く開いた唇からは、今にも甘い息が漏れそうで。


智「翔、くんは...? 男にこんな事するの、嫌じゃないの...?」

翔「俺は」


あ、今だ。
この不思議な行動を正当化するには、今しかない。


翔「俺も、わかんなかったんだよね」

智「え?」

翔「俺も、もしかしたら男を恋愛対象に見れるのかな、なんて思った事あったからさ」


幸いにも智くんは単純だし、俺の話は“うんうん”なんてきちんと聞いてくれるんだ。


智「え、そうなの...?」

翔「うん、だけど」


これで俺を正当化出来る。


翔「今まで試しようがなかったからわかんなくてさ」

智「うん」


ほら、俺の話を鵜呑みにしてる。


翔「だから、試していい?」


断れないのも知ってる。


翔「...試させてよ。こんなの、他の人には頼めないからさ...」

智「翔くん...」


だから智くんはその身体を俺に任せるんだ。



きっと、その筈だ。







ストーリーメニュー

TOPTOPへ