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神様の願い事

第5章 混乱




「どしたの変な顔して」

雅「神様ぁ~...」


気分がかなり沈んだ俺は神様に相談に来てる。


「何をしてたか聞かなかったの?」

雅「聞こうと思って連れ出したんだけどさぁ...」


聞けなかった。
松潤の後ろで目をぱちくりさせてるニノは楽しそうだったし、なのに俺が連れ出すと途端に不機嫌になって。


「情けないなぁ」

雅「だって」


やっぱ俺のひとりよがりだったのかな。


雅「あんな店でさ」

「あんな店?」

雅「口説く時に連れてく店だよあそこ」

「え」


御用達だから行ったのかと思いたいけど、だけどあのニノの笑顔が。
松潤と話してる時のニノは楽しそうで。


「だからあの店カップルばっかだったんだ...」

雅「え、神様知ってるの」

「あ、いや知ってるってか、前を通りかかっただけだけどね」

雅「へえ、あんなとこ野良猫でも歩くんだ」

「野良って」


そんな事を思いながら話してたから、つい口が滑っった。


雅「あ、ごめん」

「別にいいけどさ」


アイツは可愛いからな。誰にでも好かれるし。
だけどアイツ自体は好き嫌いが結構ハッキリしてて。
だから苦手なヤツと話してると分かるんだ。
あ、嫌なんだろうな、俺が間に入ってやるかなんて思ってさ。
するとやっぱりホッとしたような顔で俺を見て。
後で“さっきはありがとね”なんて言うんだ。


雅「はぁ...」


だから好きなヤツだって分かる。

安心したような笑顔を振り撒いて楽しそうで。
そんなの俺にだってするからさ。


雅「わかんね…」


だからきっとアイツも俺の事が好きなんだと思ってた。
リーダーの事が好きなのかと疑った時もあったけど。

だけどやっぱり、特別な“好き”は俺に向けられてるんだと思ったんだ。


「...溜息はシアワセが逃げるんだよ?」

雅「うん...」


だけど勘違いなのかな。
アイツが本当に好きなのは、俺じゃ無かったのかも。


「君がいつも言ってる事でしょ? ほら、笑って」


そんなの、神様に言った事なんて無いのに。


「大丈夫だよ。きっと、幸せになれる」

雅「神様...」


心配そうに見つめる神様は微笑んでて。
小さな肉球で俺の手をぽんぽんと叩く。


だから俺は笑う。


混乱は収まらないけど、神様の言葉を信じて今は笑ってみるんだ。






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