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神様の願い事

第5章 混乱

《sideS》



あっという間に俺は捕まった。

只でさえ近かったその距離を更に詰めて、俺の腕を強く掴んだんだ。


翔「さと...っ」


力任せに俺を引き寄せて、有無を言わさず抱きしめる。
痛い程にきつく俺を絞めて、首元には智くんの頭が置かれた。


智「ふぅ...」


安心したかのような息を漏らすから、鏡越しにチラッとその顔を見たら。


智「...なんだよ、翔くんのせいだろ」


目を細めてうっとりとしてたのに、バチッと俺と目が合って。
それで少し睨んで文句を言われた。


智「あのお守りのせいだよ」


なんなんだこの色っぽい智くんは。


翔「お守り...?」

智「持ってるんでしょ? 肌守り...」


俺の肩に乗せた頭を傾け、揺らめく潤んだ瞳で見上げる。


智「セコイな...」


そんな事をポツリと言うその声は、少し低くてアダルトで。
鳥肌が立ちそうな程に妖艶に聞こえた。


智「そりゃこんなんなる訳だよ...」


どうしよう。思考が追い付かない。
智くんの話す事は、全く意味が分からないし。


翔「こんなんって、どういう...」


もう睨まれてはいない。
伏し目がちで話すその姿は、堪らない程の色気を纏っている。


智「...知ってるから持ってきたんだろ?」

翔「な、なにを...」


持ってきたと言えば、あの肌守り。
智くんは、あのお守りのせいだと言った。


智「俺をこんなにして、どうしたいんだよ」

翔「え...」


やはりお守りのせいでこうなったと?
だけど。


智「すげぇ効果だな、そのお守り...」


持ってないんだ。持ってきたけど、持ってないよ。
置いてきたんだ。
相葉くんに返してもらった肌守りは、そのままカバンに入れたんだから。


智「俺で遊んで楽しい...?」

翔「智くん、違」


ああほら、また。


智「こんなにしたの、翔くんだからな…」


スイッチ、入ってる。


智「なんとかしろ...」

翔「...っ」


熱を含んだ瞳を薄く開いて、智くんは俺の後頭部を掴む。

俺は呆気なく魅了されて。


智「は、ぁ...」


簡単に俺を惑わせる。



その甘い吐息に、どこまでも混乱するんだ。







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