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神様の願い事

第6章 名探偵

《sideO》



ふぅ、気まずい。
ああ気まずいな、気まずいよ。

言ってる場合か。


帰り際に、後ろから翔くんの声が聞こえた。
離れてたんだろう、その声は小さく俺を呼んだ。

普段なら、“呼んだ?”って振り向くのに、俺は振り向かなかった。

聞こえないフリをしたんだ。

だってやっぱ顔もちゃんと見れないし、気まずい空気を出しそうだったから。


智「はぁぁぁ」


ベッドに転がり深い溜息を吐く。


智「無視しちゃったな…」


可哀想な事をしたかな。
だっておかしな事をしたのは俺なのに、その俺が翔くんを避けるように帰ってきた。


智「怒ったかな...」


天上を見ながらボソボソと独り言を呟く。
いつもなら、あのじいちゃんが出てきて小煩い説教でもする所なのに、今日は凄く静かだ。


智「はぁ、寝よ」


胸のモヤモヤは募るばかりで。
何をどう考えても何の答えも出やしない。
何の答えを出したくて何を考えようとしているのかすら、分からないんだ。


智「明日、考えよ...」


こんな時は現実逃避に限る。
とりあえず寝て、朝起きたら少し頭もスッキリしてる筈だ。
また会う時の為に、明日スッキリした頭で考えよう。






翔「あ...? え、どうしたの?」


ほら、夢にまで出てきやがる。


翔「いつからここに?」


不思議そうな声を出してる。


翔「ほら、そんな所で寝たら風邪ひくよ?」


ゆさゆさと俺を揺さぶる。
その揺れが俺の脳に伝わり、俺は薄く目を開いた。


翔「あ、起きた(笑)」


ぱちっと目の開いた前には翔くんの顔が。


「え」

翔「いや、“え”って。こっちの台詞ねそれ」

「え、なに...」

翔「だから(笑)」


キョトンとする俺の前で、翔くんは呆れた顔をして見せた。


翔「風呂から出てきたら床に転がってるから。驚いたのはこっちだよ?(笑)」


夢じゃ無いのか。
俺は、翔くんの部屋にいた。


翔「最近呼んで無くても来るね?」


少しの気まずさも感じさせず、やけに普段通りに話しかけてくるなと思ったら。


翔「神様って、暇なの?(笑)」


俺を見て“神様”と言う。


翔「あ、わかった。俺に会いたかったんでしょ(笑)」



そうか。今は神様だったか。


俺じゃ無いから、あんなに屈託の無い笑顔で話すのか。





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