
神様の願い事
第6章 名探偵
翔「あ、智くん...」
智「おまたせ...」
どうやって誤魔化そうかと困り果てていたら、廊下からスタッフが俺を呼んだ。
それで狼狽えもなんとか納まり、猫の名残を引っ込め翔くんの待つスタジオにやってきた。
翔「遅かったね。何かあった?」
智「いや...」
わちゃわちゃする三人を残して慌てて出てきたんだ。
猫耳を引っ込めたところは相葉ちゃんに見られてはいないけど、それが吉と出るか凶と出るか。
翔「それで、あの、さっきの事だけど」
智「さっき...?」
言いにくそうに切り出した。
“さっきの事”とは、きっとあれだ。
翔「その、相葉くんと」
智「ああ、大丈夫だよ。誰にも言わないから」
やっぱ相葉ちゃんだったんだ。
翔「や、じゃなくてその」
智「てか、あんまり見えなかったし」
だからか。
相葉ちゃんはニノの事が好きだし、だからあんなに寂しそうにしてたんだ。
翔「だから、キスしてたように見えたとは思うんだけどさ」
だけど神様の俺がけしかけたから。
だから、勇気を出したんだ。
翔「でも違うんだよ。そう見えただけであれは」
あれ? でも待てよ?
翔「ふざけてただけなんだよ」
ということは、三角関係とかいうヤツか?
智「ふざけてた...?」
いやいやそりゃ駄目だ。
翔くんには幸せになって貰いたいと心から願っているのに、相手が相葉ちゃんだとそれは困る。
翔「そう、そうなんだよ! あれは遊んでただけで本気じゃないから!」
だってニノは本当に相葉ちゃんの事が好きだし、相葉ちゃんだってそうなんだ。
智「本気じゃない...?」
ああ、だから翔くんは心にも無い事を言うのか。
あの二人の仲を知っているから、自分の気持ちがバレては困ると俺に嘘をついてるんだ。
智「本気じゃないキスなんて、翔くんに出来るの...?」
その嘘をそのまま聞いてやれば良かったのに。
なのに俺はうっかりそんな事を言ってしまう。
だって辛いのに、自分の気持ちを隠そうとするんだ。
あの二人の仲を知ってるから、身を引こうとしてるんだ。
翔「じゃなくて...」
情けなさそうに眉を下げて俺を見るのは、辛いからなんだろ?
