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神様の願い事

第6章 名探偵




「はい、もうちょっと寄り添って~」


翔くんが眉を下げて俺を見るから。
だから俺は励ましてやりたくなった。


智「こんくらい?」

「いいね~、それで... そう! 仲のいい感じで!」

翔「ちょ、近すぎない?」

「いいよいいよ!もっとラブラブな感じ出しちゃって~」

智「こんなの?」

「いいね!どこから見てもカップルだよ~!」


いつも以上にはりきった。
かなりテンションを上げて挑んでやった。


翔「...どうしたの今日。やけにはりきるね?(笑)」

智「そう?」


あんなに気まずいと思ってたのに、朝から相葉ちゃんとの一件を見てしまってそっちの事で頭がいっぱいになってしまったし。

そんなこんなでグダグダしてたら猫化の状態を相葉ちゃんに見られて。

しかも今はどう見てもおかしなテンションで撮影をやり切った。

そのお陰で、俺は随分普通に翔くんと話せている。


翔「...あ? なんだ、みんな帰っちゃってんじゃん」


撮影も無事に終わり、楽屋に戻るともぬけの殻だ。


智「ほんとだ...」


相葉ちゃんが気になる。あの二人は上手く誤魔化してくれただろうか。


翔「着替えて、俺らも帰ろっか」

智「そうだね」


バサッと勢いよく衣装を脱ぐ翔くんの隣で、俺はもそもそと着替える。
そんな俺の目に、翔くんの筋肉質な背が写る。


翔「ん?」

智「あ、いや」


見慣れている筈なのに、何故かドキッとした。
そんな胸の鼓動を感じた筈も無いのに、翔くんはタイミング悪く振り向いて。


翔「...どうかした?」


思わず目を逸らした。


智「何も、無いよ」


そんな俺の前で気配が止まるんだ。


翔「...思ってたんだけど」


俺の前に立って、静かに口を開くんだ。


翔「やっぱ今日おかしくない? さっきの撮影も、カラ元気でしょ?」


目を合わせられない俺を覗いて、言う。


智「そんな事無いよ」

翔「...本当に?」


どうしてお前は俺を真っ直ぐ見られるんだ。


智「本当だよ」

翔「じゃあ、こっち向いて」


お前は気まずくないのか?
俺だってなんとかイケそうだと思ったけど、楽屋で二人きりとか。


翔「ね、俺を見て...?」


静かな部屋に、お前の低い声が響くんだ。



それだけでもう、俺は顔を上げられないんだよ。





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