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神様の願い事

第6章 名探偵

《sideS》



指さしてヘラヘラしながら言うとかどうなのそれ。


智「...なんだよ、やっぱ、いるんじゃんか…」


と思ったら、その指を下ろして自分の股の間に引っ込めた。


智「はぁ...、そっか...」


猫背で、両手を股の間に突っ込んで。
しかも俯くときた。
そんな姿、どうしてそんな無防備に晒すんだ。


翔「でも、俺が寂しそうに見えたのは、きっと貴方のせい」

智「ええ?」

翔「貴方の様子がおかしかったから、俺の様子もおかしかったの。でしょ?」

智「え、俺、おかしかった?」

翔「おかしかったでしょうよ」


背を丸めたまま、顔だけをコッチに向けるんだ。
その小さく纏まった姿が愛おしく見えると言う事を、この人はきっと知らない。


翔「ちょっとキスしたと思ったらすぐ」

智「へ」

翔「俺の事避けてたでしょ」

智「ちょっとって」

翔「そっちからしたくせにさ」

智「や、だってその」


なんだろ俺。少し酔ったのかな。
今まで言えずに燻っていたものが、口からどんどん出てくる。


智「しちゃったらしちゃったで、気まずくなんない? 後の事考えてなかったからさ…、どうしようかと思って」

翔「避けたら余計気まずいでしょ」

智「う、うん」


言おうかなと一瞬思ったんだ。
相葉くんだって勇気を出したし、誤解も解けてこの流れで。
雰囲気も良かったし、気持ちを言えるかもしれないと、そう思った。


智「でもさ、ちょっとって事は無いよ。結構なキスだよあれ」

翔「俺からもしちゃった事あったしね」


なのに、俺の恋を応援するとか言い出したもんだから。
あ、やっぱこの人は、俺の事なんとも思っちゃいないんだと。


智「でもあれは、俺の事心配してくれてたんでしょ? ちょっと怖かったし(笑)」


時期尚早だと。
只の仲間にこんな事言われちゃ、相当困るんだろなと思って、言えなくなった。


翔「怖かった?」

智「ん、ちょっと怒ってたじゃん。編集長に対して不用心だって」

翔「ああ...」


ほら、やっぱりだ。

俺が怒ってあんな事をしたと思ってるんだ。


智「ごめんね? これからは気を付けるから」



怒ってたんじゃないよ。


あれは只の、ヤキモチだったんだ。






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