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神様の願い事

第6章 名探偵

《sideS》



翔「一体何しに来たんだ...」


“ちょっと考えるわ”とか言って一斉に帰って行った。
何を考えるんだか知らないが、俺の大事な日課を邪魔するとはどういう事だ。


翔「さて、まだ映るかな...」


邪魔者も帰ったし、もう一度智くんを愛でよう。


翔「お、映った♪」


ベッドの脇に掛けてある小さなアンティークの鏡。
皆はこの鏡を不思議そうに覗いていたけど、なんとか秘密は守った。


翔「眠いのかな。ふは、可愛い...」


ウトウトする智くんを鏡で覗いて、デレ顔を晒す。
こんな事、毎晩のようにしているなんて。
絶対にバラす訳にはいかないんだ。


翔「ん...? 電話かな...」


鏡の向こうの智くんは今にも寝そうで。
風呂上がりなのか服もちゃんと着ていないのにベッドでウトウトしてた。
その智くんが徐ろに起き上がってスマホを耳に当てた。


潤「もしもし」


ああ、やっぱり電話か。
目を擦って口を動かしてるから、誰かと話してるんだな。


潤「...今って、左でスマホ持ってる?」


きょとんとしながら話す姿を見ているだけでニヤけてしまう。


潤「で、右にミネラルウォーター持ってるよね?」


あ、ちょっと固まった。そして、ふふっと笑うんだ。
目尻に皺を作って、“なんで分かんだよ”なんて笑いながら話してるに決まってる。


潤「風呂上がりなの? sexyだね」


この声は松潤か。


潤「だって服着てないでしょ? タオルは巻いてるけど」


ん? 松潤?


翔「なんで声...」


この鏡は音は聞けないんだ。
俺の妄想の世界だし、見えるのは俺の見たい映像だけの筈だ。


潤「ねえ。ベッドの前に鏡あったじゃん。そう、デッカイの」


ちょっと待て。この声、俺の後ろから聞こえてないか?


潤「その鏡の前に立ってくれない?」


俺は恐る恐る後ろを振り向いた。
その声のする方にと、目を見開きながら。


翔「...っ、ま、松じゅっ」


すると目が会った。
俺しか居ない筈のこの部屋にいる、涼しい顔をしてスマホを耳に当てる男と。


潤「ふふっ、そっちじゃないよ。コッチ、鏡の方に向いて?」


俺の口を抑え、ニヤリと笑う。

不敵な笑みを俺に向けながら、鏡の中の智くんと無邪気に話す。


侮れない。いつの間に居たんだ、松本潤。




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