神様の願い事
第6章 名探偵
目を見開く俺の口を押さえ、松潤は話す。
潤「その鏡、何が映ってる?」
智『は?』
そのスマホの向こうから、智くんの声が聞こえた。
智『何って、俺が映ってるけど』
潤「本当?」
智『本当だよ。鏡だもん、当たり前じゃん(笑)』
潤「...髪、跳ねてるよ?」
智『え? あ、本当だ』
鏡に映る智くんは、目を凝らして跳ねている髪を撫でた。
智『...ってなんでわかんだよ。どこで見てるんだ(笑)』
潤「カンだよ」
智『カン?』
潤「そ。当たったでしょ?」
智『当たりすぎだよ。お前すげえな(笑)』
鏡の中の智くんはふにゃっと笑う。
目尻に皺を寄せて、なんなんだよと笑ってた。
潤「じゃ、またね」
智『え? なんか用事あったんじゃないの?』
潤「何も無いよ。ちょっと声が聞きたかっただけ」
智『なんだそれ(笑)』
松潤がスマホを耳から離すと同時に、鏡の中の智くんも電話を切ったんだ。
そして小首を傾げて、またベッドに沈んだ。
潤「これどういう事?」
俺の口を押さえたまま、至近距離から松潤が俺に問う。
潤「なんなのこれ。盗撮?」
真顔の松潤はかなり迫力がある。
潤「リーダーからはこっちの部屋見えてないみたいだし、どんな仕掛けがしてあるの?」
翔「し、仕掛けなんてっ、もがっ」
潤「あ、話せないね。ごめん」
漸く手を話してくれたけど、その目は冷ややかだ。
明らかに変態を見る目つきをしている。
翔「これは、俺の妄想で」
潤「妄想?」
翔「だから、本当の事じゃなくて俺の妄想が映ってるだけで...」
だけど、さっきの智くんは松潤との会話が成立していた。
翔「と、思ってたんだけど...」
潤「でもこれ、リーダーの部屋だよ」
智くんの部屋も、俺の妄想に合わせて出てきてるだけだと思ってた。
潤「ほら見て。明らかにリーダーでしょ?」
“見て”と指を差す鏡には、智くんが映ってる。
それは智くんだけど、俺の頭の中の智くんで。
潤「妄想じゃないよ。本物だよ?」
確かに俺の思い通りには動かない。
勝手にちょろちょろと動いて俺を和ませる。
これは、妄想じゃなかったのか?