テキストサイズ

神様の願い事

第7章 謎のオバケ

《sideO》



俺は一体何を責められているのか。


“怒っているのか”と翔くんは言うけど、どちらかと言えばそれは翔くんの方だ。


智「そんなに、その鏡が気になるの...?」


話を遡れば、論点はこの鏡の筈。


翔「え?」


なのに、鏡の話を持ち出すと途端に“うっかりしてました”なんて顔をした。


智「違うの...?」


ドキドキした鼓動がバレないようにと早く離れたいのに、俺を押さえ付けて離さないし。


翔「いや...」


只、未だ気付かれずにいられるのは、翔くんが体重をかけないよう気遣ってくれてるから。


智「何も、おかしな事は無いよ。本当に普通の鏡だし」

翔「そう...」


普通なら、ベッドでこんなふうに押さえ付けてまでする話じゃないだろう。

だけど、翔くんも何かおかしいと勘付いてる。


翔「...それにしちゃ、緊張してない?」

智「え...?」

翔「脈、凄いんだけど」


まずい。
心臓の音は気付かれずとも、俺の手首をしっかり掴む翔くんに激しい脈が伝わっている。


翔「何を隠してるの?」

智「な、何も隠してなんか」


俺が猫だと、神様だとバレたらどうする?
何も知らないふりして恋の相談に乗ってたとか、今更そんな事言える訳も無い。


翔「汗も、かいてる」

智「そ、それは」

翔「こんな汗かくなんて、何かある証拠じゃね...?」


本当の俺を見せろと、射抜くような瞳で言っていたのに。
なのに今の翔くんは、取り調べ中の刑事のように凄んだ瞳を向けてくる。


智「だから、恥ずかしいだけだって言ってるじゃん」

翔「恥ずかしい...?」

智「っ、べ、ベッドでこんな...、緊張するに決まってるよ...っ」


これは本音だ。
正真正銘の、俺の本音。


翔「だから、コッチ見ないの?」

智「そう、だよ」


見れる訳ねえ。
この俺の本心が伝わったかどうかは知らないけど。


翔「鏡の事じゃなくて、恥ずかしいから脈が凄いって言うの?」


本当を見せろって言うから、見せてやってるんだ。
普段ならこんなの誤魔化してる。


智「本当だよ…。見せろって、翔くんが言ったんじゃんか」


なんだよそれ。

見せたって結局疑うんじゃねえか。



それなら最初から、おかしな事言うんじゃねえや。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ