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神様の願い事

第7章 謎のオバケ

《sideS》



背けた顔にかかる髪。
その髪の隙間から覗いた瞳は、俺と目が合った途端、瞳孔を開かせた。


智「な、に...」


そんな瞳を向けられて冷静でいられる筈も無く、俺はすぐさまその瞳に引き込まれた。


翔「逸らさないで」


掴んだ手首を片方だけ離し、ふんわりとした頬を包む。

その掌の中にある柔らかい感触に俺の鼓動は高鳴って。

掴んだ頬はそのままに、親指だけ伸ばして紅い唇を撫でた。


智「ん...」


するとどうだろう。
あんなに罪悪感に苛まれながらこの家にやって来たというのに、俺はあっさりとその唇へ吸い込まれた。


智「しょう、く」


智くんは身体を強ばらせて。
未だ掴んでいる片方の手首が、ピクッと動いた。


智「だ、め」


その言葉通りに、智くんは頬に添えられた俺の手を掴む。


翔「本当に...?」


だけどその力は凄く弱くて。
とてもじゃないけど引き離すなんて、到底無理なんだ。


その言葉を本当と取ればいいのか、その抵抗する気も無い力を本当と取ればいいのか。


翔「どっち...?」


話した瞬間の唇の隙間に舌を差し込めば、その咥内は驚く程に熱くて。
まるで俺を待ち侘びていたんじゃないかと、錯覚を起こしそうになる。


智「ん、ふ」


咥内は熱いくせに、戸惑うように俺から逃げる。
手にはなんの力も篭っていないというのに。


智「ぁ...」


そんな戸惑いながら逃げてたんじゃ、すぐに捕まるのは当たり前だ。

観念したのか舌の動きを止め、唇の隙間から甘い吐息を漏らすのは貴方なんだ。


翔「...っ、さと」


観念したのをいい事に、俺は捕まえた舌を弄ぼうとした。


智「ぁ、ふ」


なのに。


引き離すどころか、智くんの腕は俺の首に回されて。


智「しょ、う」


甘い声で、俺の名を呼んだ。


智「んぅ...」


未だ掴んでいたもう片方の手だって。
静かに、それはそれは華麗に俺の手からスルリと抜けて。

その腕まで、俺に回して。


翔「智くん...?」


その熱い咥内も、甘い声も。

もしも俺だけの為にあるんだとしたら。


智「ふ...」


こんな声を聞いてしまえば、そう勘違いしてもおかしくは無い。


貴方の本心は分からないけれど。


だけど今だけは、勘違いしてもいいという事だろう?



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