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神様の願い事

第7章 謎のオバケ




ピピピピ


智「あ」


そんな不思議な時間も終わりを告げる。


翔「なに?」

智「先週のアラーム。消すの忘れてた...」


こんな夜中に見計らったかのように鳴る。


翔「ああ、確か番宣ラッシュだったね」

智「うん」


早朝の生番組に出演する為、夜中に起きたんだった。


智「止めるから、ちょっと...」

翔「あ、うん」


荒い呼吸を漏らしながら、貪るようにキスをしてた。
それだけで熱くなってしまった身体を無視するように、俺は翔くんの下からスルリと抜け出した。


智「...翔くん朝からロケだったよね?」

翔「うん」

智「何時から? もうこんな時間だけど」

翔「え」


手に取ったスマホを翔くんに向ける。


翔「って、えっ もうこんな時間っ?」

智「早く寝た方がいいんじゃない?」


そう言うと、翔くんもベッドから飛び降りて。


智「これでいい?」

翔「悪いね」

智「タクシー呼んでおくよ」


淡々と話し、何事も無かったかのように着替えを渡した。





智「すぐ来るみたいだからコーヒーでも...、じゃ、寝れないね」


受け取った服をこれまた何事も無かったかのように纏って、俺の言葉にクスッと笑う。


翔「水だけ貰える?」

智「うん」


静まり返った部屋。
そのダイニングの椅子に腰掛け、俺が持って来るであろう水を待つ。


コトン...


智「はい」

翔「ありがとう」


翔くんはその水を持つ。
飲む訳でもなく、囲むように両手でグラスを包んだ。


翔「...座んないの?」

智「ああ、座る」


俺はグラスを置いた場所から動かずにいた。
そこに居ようと思った訳じゃない。
だけど何故か動く事を忘れて、立ったまま翔くんのグラスを持つ手を見ていたんだ。


翔「...あのさ」


ああ、立ちっぱなしだったなと我に返り、テーブルを挟んで対面する椅子を引いたところで、翔くんは口を開いた。


翔「さっきの、事だけど」


俺は口を開かずに、その翔くんの動く唇を見ながらゆっくりと座る。

俺が据わったことを見届けた翔くんは、漸くグラスを持ち上げ一口水を飲んで。


また静かに、口を開こうとした。





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