
神様の願い事
第7章 謎のオバケ
智「はぁぁぁぁぁぁ...」
「また盛大に...。あんなエロいキスをしておいてなんじゃその溜息」
疲れた。どっと疲れた。
翔くんを漸く追い出して、張り詰めていた緊張が疲労となって伸し掛った。
智「見てたのかよ。趣味悪ぃな...」
俺の欲はちゃんと誤魔化せたかな。
「さすがに分かったじゃろう? どうしてあんな事をしてしまったのか」
智「ええわかりましたよ」
「自分の気持ちを認める気になったのか?」
智「...認めたらいいんでしょ? ハイハイ好きだよそうだよ、大好きだよ俺は」
「なんだか投げやりになってないかの?」
智「そりゃなるだろ」
認めたってどうしようも無いんだから、ちゃんと誤魔化さなきゃいけないんだ。
智「気付いたところで何になるんだよ」
「なにって」
智「なんもなんないじゃん」
「どうしてそう思う?」
智「当たり前じゃんか。...だから気付きたく無かったんだ」
「気付きたく無かった?」
智「だってどうしようも無いじゃん。...辛いだけだよこんなん」
「...なるほどな」
俺は駄目なんだ。好きだと思えばもう大好きでさ。
好きが溢れちゃって、止める事が出来ないんだ。
智「翔くん相手に“好き好き”言えないでしょ」
「言えないのかの?」
智「言えないだろ普通。どんだけキモいんだよ俺」
絶対引かれるわ。
気持ち悪いって、なんだコイツって思われる。
「まあワシも、その気持ちが邪魔をして、死ぬ間際まで何も言えなかったんじゃがの...」
智「え?」
「まぁアッチもなかなかのヘタレじゃから。こっちが瀕死になって漸く気持ちを漏らしてくれたんじゃ」
智「瀕死て」
「だからアレだ。死ぬ間際で気付いたって遅い事もあるんじゃ。こんな事ならもっと早くに言っとけばなって、...ワシはそう思ってここに来たんじゃ」
だけどそれはケースが違うだろ。
俺と翔くんには当てはまらないのに。
智「俺はそんなの思わないよ」
「本当に?」
智「だって、言ったら絶対壊れる」
普通の恋じゃないんだから。
そんなの打ち明けてしまえば、何もかも終わってしまう。
それならこのまま、何も言わずにずっと側で。
そう考えるのは、多分普通の事だ。
