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神様の願い事

第7章 謎のオバケ

《sideS》



「どうした大野。今日は随分と櫻井にベッタリだな?」


あれから数日、特に皆での仕事も無く今日は久し振りに智くんに会った。


智「そぉ?」


先輩後輩交えての食事で、既に智くんは酔っている。


智「酔っ払っちゃうとねぇ。仕方ないんだよねぇ」


智くんのパーソナルスペースは狭い。
普段でも他人との距離が近いのに、酔っ払うとその範囲はもっと狭くなって。


「でもいつもは俺とかだったろ? 櫻井に張り付くなんて珍しくないか?」


自分より大きな人を見付けては、あっちにフラフラこっちにフラフラと先輩だろうがお構い無しに凭れかかるんだ。


智「だって翔くん好きだもん」

翔「えっっ」

智「えってなんだよ。知ってるでしょぉ?」


だからいつも俺はハラハラしながら智くんを見ていたんだ。
だけど今日は、違うドキドキが俺を襲う。


「まあな。おまえは昔から櫻井の事が好きだったしな」

智「んふ♪」

翔「すっ、好きって」

智「翔くんも俺の事好きだよねぇ?」

翔「す、すっ」


俺にぴったりと凭れかかって、智くんは先輩と話す。
ゴロゴロと俺の胸に後頭部を擦り付け、たまにチロッと俺の顔を覗くんだ。


智「ニノもぉ、まちゅじゅんもぉ、あいばちゃんも大好きだよぉ?」


あ、そっちの好きね。


智「翔くんもだよねぇ?」

翔「も、もちろん」

「ったく、お前ら本当仲いいな」

智「んふ、当たり前じゃん」


こんなにピュアに好きだと言ってくれてるのに。
俺はなんてヨコシマなんだ。


智「あ、翔くんのソレ美味しそう」

翔「た、食べる?」

智「うん♪」


ニコニコと笑って俺の前で口を開けて待っている。

この間はその紅い舌で俺を貪っていたのに。


智「ん、美味しい」


今は無邪気に俺が差し出したフルーツを食べるんだ。


智「ねぇ、もういっこ...」


紅い舌で唇をペロリと舐めて。


甘い香りをその唇から漂わせながら俺を誘う。


その唇は今、キスをしたいとは思っていないのだろうか。





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