テキストサイズ

神様の願い事

第7章 謎のオバケ




ドサッ

やべえ。まんま俺じゃねえか。


智「翔くんは...、居ない、な」


どういうトリックかは知らないが、壁に掛かった小さな鏡から俺は飛び出た。


智「今のうちに...」


だがこの寝室には翔くんの姿は見当たらないし、なんなら猫耳すら生えていないまんまの俺だし。
見つかる前にとっとと退散するべきだと俺は鏡にもう一度入ろうと試みる。


智「えっ、なんで戻れないの」


入れない。まず身体の方がデカいし、鏡は真っ黒で何も受け付ける気配が無い。


ガチャ...


隣室の奥から扉の音が聞こえる。
さっきは水の音が聞こえていたし、風呂から出てきたのかもしれない。

いくら仲間だからと言ってもこんなところを見られては、不法侵入で訴えられてもおかしくはないんだ。


翔「あ... 着替え」


畜生持ってくるのを忘れたと、翔くんの足音が近付いてくる。


ガチャ


翔「...え」


光が部屋に射し込んだ。
その後、少しの間を開けて翔くんの声がした。


翔「智くん...?」


隠れなきゃと目だけを動かして周りを見たけど、時は既に遅い。
もう俺は、見つかってしまってんだ。


翔「智くんだよね...? なんで、ここに」


こんな状況、なんの説明も出来そうにない。
俺の後ろ姿を翔くんは見ているにも関わらず、俺は最後の悪足掻きをした。


智「ん~...、むんっっ」

翔「え」


生えた。俺の、耳と尻尾。


智「え...? 智くんって?」

翔「あ...」


漸く振り向いたそこに、立ち竦んで俺を見る翔くんが居た。


智「僕だよ。神様」



これでなんとか、誤魔化せそうか。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ