
神様の願い事
第7章 謎のオバケ
智「どうしたのボーッとして。あ、また急に来たから?」
“神様だよ”と名乗っても、翔くんは只立ち竦んで俺を見ていた。
智「今日は呼んだでしょ?」
翔「呼んでないよ...」
智「本当? じゃあなんで来ちゃったのかなぁ...」
翔「て言うか」
神様のフリをする俺を、翔くんの瞳が射抜く。
翔「やっぱその鏡から出て来たんだよね…?」
智「え? ああ...、うん。まぁ」
こればっかりは、正直に答えないと状況的にどうしようもないし。
翔「今さ」
智「うん?」
翔「それ、生えてた…?」
眉を寄せた翔くんは、少しずつ俺に近付いてくるんだ。
智「それ...?」
扉から射し込む光を頼りに、俺の顔をじっと見つめて。
それで徐ろに、俺の尻尾を掴んだ。
翔「これ」
智「...っ」
翔「急に、生えなかった…?」
智「な、何を言って...。最初から生えてたじゃん」
翔「本当に?」
智「ほ、んとだよ」
やっぱ見られてたか。
すぐに生えたから誤魔化せたかと思ったのに。
翔「それにこれ」
智「なに...」
尻尾を掴んだまま、俺の首元に顔を寄せて目を閉じた。
翔「甘い...」
クンクンと鼻を鳴らして、俺の匂いを吸い込むんだ。
智「あ、甘い?」
翔「さっきフルーツ食べさせたんだよ。智くんが食べたいって言うから」
智「う、ん」
翔「だけどこぼしちゃってさ。そしたら襟元にシミが付いて」
その襟元を、翔くんの拳が掴む。
翔「ほらこのシミ、甘い香りがしない...?」
まるで胸ぐらを掴むように、俺を締め上げる。
その瞳はほんの少し据わっていて。
智「よ、酔ってる...?」
翔「どうして酒呑んでたって知ってるの?」
智「だって、アルコールの匂いするから」
酒を呑んだ翔くんはタチが悪い。
翔「そうなんだよ。実は智くんと一緒に呑んでてさ」
いつに無く強気で、何もかも見透かす瞳をするから。
翔「あれ...? 神様も呑んだの? 俺と同じ匂いがするね...?」
それに加えて、自信たっぷりな笑みを零しやがるから。
