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神様の願い事

第7章 謎のオバケ

《sideS》



智くんだ。


翔「同じ匂いがするね...?」


今目の前に居るのは、絶対に智くんなんだ。


智「き、気のせいじゃないかな」


目をまるくして、その中の瞳を揺らす。
俺から逸らせなくて戸惑うその顔は、紛れも無くあの人だ。


翔「ねえ、これなに...?」

智「な、にって」


絶対にあの人なのに、その頭には不思議な物が生えていて。


智「本物だよ」


“本物だ”と言うとおりに、握った尻尾は温かいし。
頭にちょこんと乗った耳を撫でると、擽ったそうにピクッと動いた。


翔「本当だ...」

智「で、でしょ? だから僕は」

翔「神様だって?」


確かに猫の姿をしていた神様は、“変身だよ”と言って智くんの姿をしていた。

だけど。


翔「どうして智くんにこんなもの」

智「だから...」


だけどやっぱり、この目の前にいるのは智くんにしか思えない。


智「俺に生えるとかおかしいでしょ。だって人間だよ?」

翔「俺?」

智「あ、いやその」


唇だって、まだ甘い香りがする。


智「~っとにかく、僕は猫なの。だから生えてるの。以上」


強引に話を終わらせようとしたって、そうはいかないんだ。


翔「智くんて猫なの?」

智「は?」

翔「人間じゃなくて、猫だったの?」

智「何を言って...、人間に決まってるじゃん」

翔「だったらなんでこんなのついてるの?」

智「もぉ~ だから...」


何一つ先に進まない押し問答。
だけど俺はそれをやめない。


智「酔ってるんだよ翔くん。ちょっと頭オカシクなっちゃってんだよ」

翔「あぁ、そうなのかな」

智「絶対そう」

翔「だけどこれは、本当でしょ?」

智「...っ」


最近は、この人を目の当たりにすると戸惑う事が多くて。
だけど今日は酒のせいなのか、何故か強気に出られている。


翔「この手触り、本当だよね…?」


頭がおかしくなって幻想を見ている訳じゃない。


俺が触れるそれは、紛れも無く本物だ。





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