
神様の願い事
第7章 謎のオバケ
いやちょっと待て。
紛れも無く本物だという事はどういう事なのか。
翔「本物、だよね?」
さわさわと撫でる尻尾は、相変わらず温もりがあるし。
翔「智くんでしょ...?」
やっぱ酔ってるのか? いやいや違う。
翔「これ、どこから生えてるの」
智「いや、ちょ」
偽物にしてはリアルすぎるし、本物にしては信じ難い。
翔「本物だって言うなら、生えてるとこ見せてよ」
ピクピクと動く耳だって、何かの装置で動いている訳では無さそうだし。
だから俺は、その髪を掻き分け耳の根元を探った。
智「んん」
翔「ん?」
智「それやめ、く、擽ったい」
翔「擽ったいの...?」
なんと神経も通っているようだ。
翔「とすると、こっちもちゃんと生えてるのか...?」
智「んぁ」
翔「へ?」
智「っち、から」
翔「ちから?」
智「抜けるんだよ...。だから、触んないで...」
そう言うと、俺にしがみつきながらズルズルと足元に崩れていって。
翔「あ、ごめん」
智「うん...」
俺もしゃがみ込んで、申し訳なさそうに顔を覗いてやれば。
智「ぁ、だから、離せってば...」
俺の腕をきゅっと掴んで、潤んだ瞳を向けた。
翔「ああ、触り心地が良くて。離せなかった…」
神様の変身というには、出来すぎてる。
翔「俺やっぱ、この唇知ってるよ」
小さく開いた唇からは、甘い香りがして。
翔「唇から見えてるその舌だって」
さっき、果実の蜜が付いた唇をペロリと舐めていたじゃないか。
翔「これが、キスをしたそうにしてた事も」
智「え...」
無意識に、俺を誘ってただろ?
その事だって。
翔「知ってる...」
普段の貴方は何を考えているのか分からないけど、知ってるんだ。
さっきの貴方が俺を欲しそうにしてた事、俺は気付いてたんだ。
