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神様の願い事

第7章 謎のオバケ

《sideS》



翔「あっ...」


俺の腕に閉じ込めた。
甘くて、温かい熱を放つあの人を。


翔「智くん...?」


それがどうした事か急に温もりは消え、俺の腕の中は空っぽだ。

視界をチラつく明かりに目をやれば、壁に掛かった鏡が淡く光っている。


翔「え...」


その鏡は、暫くすると温かそうな光を消し、元の真っ黒な冷たい鏡に戻ってしまったんだ。


なんだどうした。
やっぱり酔いが回っているのか。


自分を疑いそうになった時、俺の掌に残る柔らかい毛が目に付いた。


翔「これ...」


あの人に生えた、猫の毛だ。


翔「やっぱり、この鏡」


絶対にここに居たのに。
神様じゃなくて、智くんが居たのに。

とすると、やはりこの鏡はあの人の部屋にある鏡と繋がっているとしか思えない。

俺の部屋と、あの人の部屋が繋がって。

どういう訳か知らないが、猫の耳や尻尾を生やした智くんが出てくるんだ。


翔「じゃあ、俺が見てたのは最初から」


あの人だったんだ。

ぴょこっと生えた耳を擽ったそうにピクピクと動かしベッドに転がっていたのも、尻尾で脇腹を掻きながら寛いでいたのも。

俺が見てたのは、ずっとあの人だったんだ。


翔「ここに来たのも...」


“呼んだでしょ?”と言いながら忽然と部屋に現れるのも。


翔「あの、黒猫も...?」


“変身だよ”と言い放つ黒猫の姿をしたあの神様も。


翔「全部、智くんだって事...?」


それなら、辻褄が合う。

だって智くんには話した事も無いのに。
それなのに、“好きな人がいるんでしょ”と言う。



神様にあの人の姿を重ねて甘えた事も。

あの人の温もりを感じたくて、“触れさせて”と抱きしめた事も。



次の日、素知らぬ顔で笑ってたけど。


あの人は知ってるんだ。


その身体で、俺を感じでいたんだから。





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