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神様の願い事

第1章 不思議な噂



破裂しそうな心臓を押さえながら、俺は智くんに近付く。

その赤くてぷるんとした唇を視界に捉えただけで目眩がしそうな位だ。


翔「智くん…」


智くんの顔の隣に手をつき、顔を近付ける。
唇が触れる瞬間、智くんの瞼が少し動いた様な気がした。


ふわっと触れたその唇は想像通りに柔らかくて。

智くんから出る甘い香りが俺の鼻を掠めた。


智「ん…」


俺はいつの間にか夢中になっていた。
その香りに惑わされて、俺の手は智くんの頬を掴んでいたんだ。


智「しょ、ぉ…」


もう俺の脳は制御が効かないんだ。
智くんの声が聞こえても、それは俺を更に煽るだけだ。


智「ん、ふ…」


甘い香りと甘い声。
智くんに貪り付きたくて仕方が無い。


智「ん、んん…っ」


智くんの口内に滑り込むと、俺は智くんの舌を追いかけた。
片手を頬にかけ、もう片方は智くんの手首を掴んだ。


智「しょ、翔く」

翔「あ…」


ぺちっと智くんの片手が俺の額を押さえた。
それで俺は我に返ったんだ。


智「どしたの翔くん。寝惚けた…?」


ふにゃっと笑いながら俺を見る。

こんな状況だ。
気まずくならない様に気を遣ってくれたんだろう。


翔「あ、あれ? ごめん…」

智「もう…、彼女と間違えでもしたのかよ…」


首をポリポリと掻いた智くんは、さりげなく俺から離れた。


智「んふ… 俺も、寝惚けてたみたいだね。抱きついてた(笑)」


彼女と間違えてキスした訳じゃない。
そもそもそんなの居ないし。


その唇に触れてみたいと思ったんだ。

俺は、貴方とキスがしたかった。


だけど智くんは?

貴方は誰と間違えて俺に抱き付いたの?



いつもこうやって、一緒に寝る人がいるの?







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