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神様の願い事

第1章 不思議な噂



翔「ちょっと、トイレ…」

智「廊下出て左だよ」

翔「え… つか、ここどこ」


気を遣ってくれたけど、すこぶる気まずい。
だから俺はトイレという避難所に逃げ込もうとした。


翔「あ?」


ベッドから降りた俺は、目の前が回ったんだ。
ぐるぐると景色が回ったなと思ったら、腰に衝撃を受けた。


智「ほら… もう、大丈夫? 呑みすぎなんだよ」


よろけて尻もちをついた俺を智くんが包む。
ふわっと肩に手を回して腰を支えるんだ。


翔「そんなに呑んだっけ…」

智「なんだよ。覚えてないの(笑)?」


智くんの介助で立ち上がった俺は、クスクスと笑う智くんを見た。
俺が崩れてしまわない様に、ぴったりと体を寄せながら智くんは笑ってるんだ。


智「ほら、トイレ 行くんでしょ?」


俺を支えて智くんは歩く。
その智くんに誘導されて、俺は見た事の無い廊下に出た。


翔「どこ…」


ふらふらと歩きながら俺は辺りを見回す。
そんな俺に、智くんは少し呆れ顔で話す。


智「おれんち」

翔「え?」

智「…本当に覚えて無いんだ(笑)」


楽しくて呑みすぎた俺は、あっという間に酔ったらしい。


智「急に目がとろんとしてさ。寝ちゃうんじゃねえかなと思って」


目を細めて智くんを見てたんだ。
ふわふわして夢見心地で。
楽しくて夢なんじゃないかと思えて。


智「大丈夫なの?ってどんだけ聞いても、ヘラヘラ笑ってるだけで答えてくんないしさ」

翔「ヘラヘラって」

智「翔くんの家分かんないし、仕方無いから代行で連れてきたんだよ」


仕方無いとはこれまた酷い。


翔「放っておいてくれても良かったのに…」

智「ゴネたの翔くんじゃん」

翔「え」


どうやら酔った俺が智くんの家に行きたいと言ったらしい。
1度でいいから家に行きたい。
じゃなければ俺は帰らないと子供の様に駄々を捏ねたと智くんは言うんだ。


翔「マジで…?」


情けねえ。
格好悪い所を見せてしまった。


智「可愛かったけどね?」

翔「へ?」

智「駄々っ子の翔くんなんて新鮮だからね(笑)」


情けないなと溜息をつく俺の隣でふんわりと笑うんだ。


その笑顔に、俺はいつも救われる。







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