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神様の願い事

第8章 半猫人

《sideS》



柔らかい日射しの中で、まぁるくなって。


智「むにゃ...」


ソファーに転がった身体は、縮こまるように背をまるめて。
だから寒いのかな、なんて思ってブランケットを掛けてやると、それを尻尾で弾き飛ばし。


智「んん...」


それで、幸せそうな寝顔を晒す。


翔「智くん、智くん」


これは明らかに“ひなたぼっこ”というヤツだ。
それをしていて眠くなってしまったんだろう。


智「んぁ...?」


俺の声に反応してピクピクと動く、頭にちょこんと乗った耳も。
ゆらゆらとしなやかに蠢く尻尾ももう少し見ていたかったけれど。


翔「おまたせ。ほら、起きて」

智「ん...、翔くん?」


だけど時間も無い事だし、仕事もしなきゃいけないし。
勿体無い事この上ないが、意を決して智くんの肩を揺さぶった。


翔「いつから寝てたの?」

智「皆が帰ってから...、いや、その前も寝てたから...」

翔「よく寝るね(笑)」


“えーと”なんて未だ寝ている目をこじ開け、全く働いていないであろう頭で考えるフリをする。


智「とりあえず、結構寝た」

翔「だろうね(笑)」


寝起きの智くんは、ぽけっとしていて子供のようだ。
頭も働いてないし、まさか猫の名残りが残っているなんて思ってもいないんだろう。


翔「皆帰っちゃったのか。悪い事したな」

智「問題無いよ、翔くん仕事だったんだし」

翔「皆は無事終わったの?」

智「ん。後は俺と翔くんのシーンだけ」


頭に耳を乗せ、しなやかな尻尾をゆらめかせた智くんは“俺”と言うんだ。


翔「...ふぅん。神様が、智くんの代役やってくれるんだ?」

智「へ?」

翔「だってソレ」

智「ソレ...って、え? あ」


自分の前で揺れる尻尾に漸く気付いた。


翔「おっかしいなぁ、智くんどうしちゃったんだろう」

智「や、あの、これは」


慌てて頭の耳を両手で隠したってもう遅い。


翔「楽屋で待ってますって、マネが言ってたのに...」

智「だからその」

翔「智くん? さとしく~ん?」


俺は目の前の智くんを無視して、廊下に顔を出してその名を呼んだ。

すると俺の後ろで頭を抱える智くんの声が聞こえた。


智「やっべ...」


今更そんな事。


俺をいつまでも騙そうなんて、大間違いだ。




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