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神様の願い事

第8章 半猫人




俺はサディステックだ。


智「怒んない...?」


いつもそうという訳じゃ無いけど、たまにSの血が騒ぐ。


翔「怒らないよ」

智「ほんとに?」

翔「怒らないから、言ってみて」

智「じゃあ...」


ソファーに座った智くんは、唇を小さく尖らせて俺をチロッと上目遣いで見る。


翔「あぁ...、やっぱりか...」


その上目遣いを逸らさずに俺が見つめるものだから、智くんは消え入りそうな声でぼそぼそと話してくれた。


翔「だから、俺に好きな人がいるとかどうとか言ってんだ」

智「す、すいません」


猫の姿をして俺の話を聞いていたのは自分だと、正直に打ち明けた。

本当は、この後に及んでまた嘘をつくんじゃないかと、誤魔化そうとするんじゃないかと思った。

だけど今日の智くんは凄く素直で、罰の悪そうな顔をしながら頭を下げている。


翔「で、いつから?」

智「翔くんに会うよりちょっと前から...」

翔「...相葉くんも神様に会った筈だけど、知ってるの?」

智「皆知ってる」


なんだと。


翔「え、皆?」

智「うん。みんな」


俺だけが知らなかったのか。


翔「どうして俺には教えてくれなかったの?」

智「てか、バレたんだよ。ちょっと前に」

翔「自分から言った訳じゃ無いんだ?」

智「耳が生えるのとかは前からバレてたけど、完全に猫になるってのは最近バレた」


不可抗力だったのか。
自分から話した訳じゃないと、俺にだけ嘘をついてたんじゃないと。


智「てか翔くんて、結構ニブいんだね」


は?


智「随分前に、楽屋で尻尾出ちゃったんだよ。翔くんに見られたと思ったんだけど気づかなかったでしょ?」


あ、あれか。
あれは頭がおかしくなったんじゃないかと自分を疑ったんだ。


智「俺の姿に戻った時だって、“変身”だよって言ったら信じてくれたし」

翔「そりゃ...」


あんな姿で信じてくれと訴えられたら俺はもう疑えないよ。


翔「人間が猫になるなんて、思っても無かったからね」

智「ふふ、だよね」


貴方の姿で、貴方の声で。


まあるい垂れた目をチラリとこっちに向けて。


俺が疑えないって分かってるから、智くんは言ったんだ。




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