
神様の願い事
第8章 半猫人
そんな自在に俺をコントロールしてたのに。
翔「今日は誤魔化さないんだ?」
智「さすがにもう無理かなって」
素直に認めるんだと思ってたのに、誤魔化すのを諦めただけだと言う。
翔「あんなに下手な嘘ついてたくせに?」
智「騙されたくせに...」
翔「あ?」
智「や、ごめん」
しおらしく唇を尖らせてソファーにちんまりと座ってたから、あんまり詰め寄るのも可哀想かなって思ったんだ。
智「翔くんて結構単純なんだね」
翔「どの口がそんな事言ってるの?」
智「すいません」
なのにもうこんな小憎たらしい事を言い出すし。
智「違うよ。単純って言うのは、すぐ俺を信じるから」
翔「ん?」
智「俺が言った下手な嘘も、翔くんは信じるから」
翔「うん?」
智「だから、もう嘘はつけないなって...」
小憎たらしい小さな口を、ボソボソと開いて話し出す。
智「もう、嘘ついちゃいけないなって。そう、思ったから...」
翔「そっか」
智「うん」
ほらな。この人はどこまでも俺をコントロールするんだ。
智「だから、ごめん...」
しっかり問い詰めてやろうと思って連れてきたのに、そんな事を言われちゃもう怒れないんだ。
翔「うん。いいよ、正直に話してくれてありがとう」
そんなに大変な事が自分の身に起こってたのに相談もしてくれず。
それどころか俺を騙して“神様だよ”なんて目の前に現れて。
どうしてそんな大事な事を話してくれないんだと、俺を頼ってくれないのかと。
怒りも少しはあったんだ。
智「よかった、気づいてくれて。俺ももう、翔くんに嘘は付きたくない...」
なのに俺の怒りはどこかへすっ飛んでしまう。
Sの血を騒がせて、意気揚々と連れ込んだのに。
結局俺のペースなんてそんなもの。
この人にかかればあっという間に崩れ去ってしまうんだ。
