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神様の願い事

第8章 半猫人




翔「え、お爺さん?」

智「うん」


じゃあ正直ついでにと、根掘り葉掘り聞いていた。
詰め寄る訳じゃなくて、疑問に思った事を只聞いてみただけだけど。


翔「そのお爺さんが、智くんを猫人にしたって言うの?」

智「猫人て」

翔「もしかしてそれって、あのちょっと不思議な感じのお爺さん?」

智「え? 翔くんも知ってるの?」


どういう訳か、智くんはそのお爺さんを知っているくせに姿を見た事が無いと言う。


翔「知ってるもなにも...。あれだよ、あの肌守りの」

智「ああ。鏡もじいちゃんに貰ったんだっけ」

翔「あれ? 俺、それ言った?」

智「や、じいちゃんに聞いた」


その割には、毎晩のように話をすると言うし。


翔「えっ? 一緒に住んでるの!?」

智「みたいなモンだよ」

翔「なのに顔は知らないって、え、どういう事?」


なんだあのジジイ。
智くんと毎晩過ごしているなんて、そんなの俺は聞いていない。


智「ん~だから、不思議なじいちゃんなんでしょ?」

翔「まぁ、知らない筈なのに何処か懐かしいって言うか」

智「そこらへんはわかんないけど」

翔「夢に出てきたお爺さんが持ってたお守りが、枕元にあったりとか」

智「ああそれ、そんな感じ」

翔「え、どんな感じ」


姿を見なくとも、不思議なんだと言う。
いや逆に、姿を見せないからこそ不思議なのかもしれない。


智「鏡、あったでしょ? 俺の家に」

翔「あ、うん」

智「その奥から聞こえるんだよね。じいちゃんの声」

翔「え」


まさかあのお爺さん、実体が無いと言うのか。


智「ふは、びびった?(笑)」

翔「べ、べつに?」


不思議な話が、急に恐怖を交えてきた。


智「あれだよ、あのじいちゃん」

翔「あ、あれって…?」


そうだ、思い返せば出会いは突然だった。
誰も居なかった筈の薄暗い商店街に、忽然と現れたのが最初だ。


智「もう死んでるよ」

翔「え...っ」


なんだ急に。これはホラーなのか。


智「とうとう見ちゃったんだ」

翔「なにを...」


すっかり日も暮れて、月明かりが智くんの顔を照らす。


智「オバケ...」



その白い光を浴びながら、智くんはニヤリと笑って見せたんだ。




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