
神様の願い事
第8章 半猫人
智「酒?」
翔「きっと合うよ。呑まない?」
届いたデリバリーに舌鼓を打っていたら、翔くんが酒を持ってきた。
智「あ、極上のやつだ」
翔「そう、それ(笑)」
智「ん~でも、呑みたいのはヤマヤマだけど」
翔「こっから帰ればいいじゃん」
寝室の方をチラッと見て、部屋の奥にあるであろう鏡をさす。
智「あれね、自由に使えないんだよね」
翔「そうなの?」
智「前も鏡から帰ろうと思った事あったんだけど、入れなかったし」
翔「じゃあここに突然来たのは?」
智「あれもわかんないんだよね。なんか急に鏡が光るんだよ」
翔「へえ...」
まあたぶん、俺が翔くんに会いたいとうっかり思ったのが原因だろうけど。
翔「どうせタクシー呼ぶんだから、呑んでもいいね」
智「まあ、ね(笑)」
“送れなくて悪いけど”と翔くんは言うけど、どっちかというとタクシーの方が都合がいいのかもしれない。
そう思った俺は、遠慮なく“極上の酒”を呑むことにした。
智「にしてもいつもあるよねこの酒。翔くんも好きなんだ?」
翔「旨いしね。でも自分用じゃなくて神様の奉納用に買い貯めしといたんだけど」
智「ああ、俺か(笑)」
翔「そう(笑) だからこの酒は智くんの為に買ったようなものだよ」
智「そうだったんだ」
翔「だから遠慮なく呑んで」
智「ふふ、ありがと」
神様の為と言ったのに、俺は嬉しくなるんだ。
結局は智くんの為になっちゃったねと、結果論なのにその部屋に並ぶ酒を見て、俺は上機嫌になる。
智「とりあえずあの鏡、布かなんか掛けといて」
翔「そうだね」
智「翔くんに見られてると思ったら、恥ずかしくてなんもできないじゃん」
翔「俺に見られてなかったら何かするの?」
智「そりゃ...、オトコだしあんなコトやそんなコトとか」
翔「どんな事だよ(笑)」
智「ふはっ、何言ってんだ俺(笑)」
上機嫌になった俺は楽しくて。
翔くんと笑っていられる事がこんなにも幸せで。
智「ふふ、楽し...」
腹を抱えて笑い合ったら涙まで出ちゃって。
翔「本当、貴方と居ると楽しいわ」
その言葉に顔が熱くなったけど、既に酒で赤くなってるし。
智「はぁ、ずっと一緒にいたいな…」
うっかり零した一言も、酔っ払いの戯言程度に思ってくれるだろうか。
