
神様の願い事
第8章 半猫人
って寝とるがな。
智「翔くん? 俺、そろそろ帰るね?」
眠くなっちゃって、もう帰ろうかなとか言い出した俺を翔くんは引き止めた。
“まだこんな時間だし少し寝なよ。起こしてあげるから”とか言っていたのに。
智「おお~い、翔くぅん」
翔「んご」
俺の隣で転がってた。
床に転がる俺には毛布を掛けてあるのに、翔くんはそのままで大の字で。
智「もぅ、自分が風邪ひくだろ」
スヤスヤと気持ち良さそうに寝息をたてる。
毛布を掛けてやると、少しモゾモゾと動いて、幸せそうな顔をして。
智「ったく...(笑)」
あんまり気持ちよさそうだったから、ついその頭を撫でてしまった。
するとその髪はサラサラで、撫でれば撫でる程に幸せそうな笑みを零して。
智「子供みたいだな…」
普段はしっかりとして、頼りがいがあって。
なのに寝顔はこんなにも無邪気で。
緩んだ頬を撫でれば凄く柔らかくて。
智「...寝てるよな?」
俺の感情が湧き出た。
その柔らかい頬に、思わず唇を落としてしまった。
翔「ん...」
擽ったかったのか、顔を少し動かした。
その仕草さえも、もっと構いたくなるような衝動に駆られる。
智「ふぅ...、帰るよ」
落ち着け、落ち着くんだ。
ここは深呼吸をして、無に返らないと。
智「ひとつだけ、聞いていい?」
離れようと距離を取ったのに、その顔を見るとどうしても聞きたかった事が込み上げる。
智「神様にも教えてくれなかったから、俺にも言わないんだろうけど」
その幸せそうな顔の奥で、誰を思ってるんだろうか。
智「翔くんの好きな人って、誰...」
夢に、その人が出てきてるんだろうか。
智「教えて...?」
嫉妬なんて。
そんなもの出来た義理じゃ無い事はわかってる。
だけど、どうしても頭を過ぎるんだ。
その優しい顔の奥で誰を見ているのか、それは翔くんに相応しい素敵な人なんだろうかとか。
俺なんて、出る幕もないんだろうななんて。
分かりきった事を思い知らされて、俺は楽しいのに寂しくなるんだ。
辛くなるんだ。
それを、翔くんは分からないだろう?
