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神様の願い事

第8章 半猫人



翔「智くん? 顔が、青い」


冷たくなった頬は、血の気がどんどん引いて。


智「ちょっと、呑みすぎた」

翔「悪酔い? 大丈夫?」


まだほんのり酒の匂いを放つ俺は、どうやら上手く誤魔化せたようだ。


翔「横になって」

智「や、大丈夫だから。タクシー、呼んでくれる?」

翔「じゃあ来るまで、休んでて」


俺の頭はパニックで、どう誘導されたのかわからないまま、ベッドに潜っていた。


翔「水、持ってくるよ」


俺をベッドに横たえリビングにと戻る翔くんは、少し小走りで。
その背を見ながら俺は真っ白な頭をなんとか動かそうと必死だった。


翔「はい、飲んで」

智「ありがと...」


横たえた俺の背を支え、翔くんは俺の唇にコップを近付ける。


智「ふふ、大丈夫。赤ちゃんじゃないんだから...」

翔「そう?」


心配そうに覗くその瞳は、俺が精一杯誤魔化しているなんて思っても無いんだろう。


智「ごめんね...?」

翔「いいよそんなの」


そうじゃなくて、また誤魔化して、ごめん。


智「さっきの話だけどさ、夢じゃないの?」

翔「え?」


嘘ばっかりで、ごめん。


智「俺、なんも言った覚え無いよ?」

翔「そう...?」


こればっかりは、正直になれないんだ。


智「まぁ、気にならなくもないけど」


本音を話して、翔くんが去って行くのが怖いんだ。


智「え、聞いたら言ってくれるの?(笑)」

翔「いや...」


ほら、ふざけた調子で聞いても駄目だろ?


智「本当、秘密主義だな」


わかってたよ。教えてくれないって。
だから、わざわざ寝ている隙に聞いたのに。


智「俺の猫化、治すのに協力してよ」

翔「“本当のシアワセ”、でしょ? それと俺になんの関係が...?」

智「だから」


もうそれは手に入らないんだ。


智「翔くんが幸せになってくれる事が、俺の願いだから」

翔「え...?」


どう転んだって無理なんだよ。だっだら。


智「翔くんが毎日幸せでいてくれると、俺も幸せになれるからさ...」


それなら俺の願いはこういう事だろ。


智「誰だか知んないけど、早く幸せ掴めよな」



それなら俺の幸せは、こういう事なんだ。




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