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神様の願い事

第8章 半猫人




翔「俺が幸せになったら、智くんの猫化が治るの...?」

智「そういう事」

翔「じゃあ、俺が幸せになれなかったら?」


誤魔化して嘘をついて、もうしたくないと思ったのに。


智「じゃあもう、治んないよ」


真っ直ぐ見ないでくれ。


智「そのうち猫に、なっちゃうんじゃない?(笑)」


痛いんだよ。その真っ直ぐな瞳が。


翔「また何か誤魔化してる...?」

智「え?」

翔「だって、目、逸らしてる」

智「そんな事...」


そうだ、誤魔化してもバレるんだ。
真っ直ぐ、俺の真理まで見ようとするから。


翔「あ、すいませんキャンセルで」

智「え、タクシー?」

翔「断った」


翔くんが徐ろに掴んだスマホは、一言二言発しただけですぐに投げ出された。


翔「大丈夫、話が済んだら俺が送ってくから」


またSの血を騒がせる。
その時の翔くんは、瞳が据わっててまるで刑事のようなんだ。


智「話って」

翔「まだ済んでないでしょ?」


これは明らかに劣勢だ。
ベッドから出ようとすると、翔くんは俺の両脇に腕を差し込み逃げられないようにする。


智「だから...、翔くんがその人を教えてくれたら俺が」

翔「俺が何? 間を取り持ってやるって?」


急に豹変するんだ。
Sの血を騒がせただけじゃない。
怒りも少し交えて、俺を本気で取り調べようとしているに違いない。


智「...そこまでじゃなくても、応援するくらいは」

翔「前も言ったよね? そんな事しても仕方ないって」

智「なんで仕方ないんだよ。翔くんの幸せを願って何が悪い...」


怒りを讃えた目をしていたのに。


智「翔くん...? どうした...?」


どうしてそんな泣きそうな顔をしている?


智「そんなに、辛いの...? その人の事...」


俺が願っても仕方ないんだと、俺が願えば願う程、幸せにはなれないんだと。


智「...なんだよ。この前、雰囲気いいって言ってたじゃんか...」


どんな苦しい恋をしているのか。


翔くんにこんな顔をさせる人がいるんだ。



俺なんか、付け入る隙も無い。




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