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神様の願い事

第9章 ねこのきもち

《sideN》



ピンポーン


出ない。ウンともスンとも言わない。


和「開けられないのかな…」


最近の対防犯物件は面倒臭い。
大野さんの部屋に辿り着く事も出来ず、俺はエントランスにすら入れなかった。


和「お」


住民が出てきた。
ロックを解除するフリしてこの隙に入ってしまおう。


ピンポンピンポンピンポーン


和「またか…」


やっぱり開けられないのか、これは困ったなと思っていたら、ドアの内側からガリガリと音が聞こえた。


和「大野さん? 俺だよ」

『にゃっ』


ガリガリガリ


和「落ち着いて。ゆっくりやれば開けられるよ」

『んにゃ』


ガリガリ...ガチャ...


和「お。開いた?」


そろりとドアに手をかけ、ガチャリと開く。
するとその隙間から黒い塊が覗いた。


「にゃお~ん」

和「ふふっ、怖かったね? もう大丈夫だよ」


俺が部屋に入ると、その身体を擦り寄せ寂しそうな鳴き声を出した。


和「心配しないで? ちゃんと戻してあげるからね?」

「んにゃ…」


大野さんを抱き上げリビングに行くと、明らかにパニックを起こしたのだろう。
部屋が随分荒れていた。


和「暴れたの?」

「にゃ...」

和「少し片付けようか」


大野さんでもやっぱり焦ることはあるんだなと、少しホッとした。
だってこの人は何が起きても動じないという、尋常では無い精神の持ち主だと思っていたから。


和「にしてもすっかり猫だね」


佇むそのフォルムも何の問題も無い只の猫だし。


和「わっ、ちょ、やめろよっ」


俺が散らかった紙をガサガサやってたらケツを振って突っ込んでくるし。


和「片付けてやってんだろ? 大人しくしろって(笑)」

「にゃにゃっ」


完全に猫になっちまったのか、大野さんは猫パンチを繰り出して紙クズと格闘している。


和「はぁ、大丈夫かな...」


まだ子猫の大野さんはどれだけ見ていても飽きない程に可愛いけど。


和「あっこらっ。ティッシュはやめろってばっ」



こんな姿、本当に翔さんに見せても大丈夫なんだろうか。




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